Japan Association for Medical Informatics

[2-G-3-03] Requirements for self-management tools that can enter and present correct data

*Rina Kagawa1 (1. University of Tsukuba)

運動などの自己管理のためのツールとして、スマホアプリ等の開発と利用は今後ますます盛んになると考えられる。ここで、多様な利用者が想定される自己管理ツールにおいては、(1)利用者が入力したデータは開発者が想定したものと一致しているか、(2)開発者が利用者に示す解析結果などのデータを利用者が想定通りに解釈してくれるか、という2点について、限られた専門家のみが利用するツール(例:電子カルテ)開発と比較して、より詳細な検討が必要になると考えられる。

たとえば(1)については、意見や態度を答えるアンケート調査(例:運動は楽しいと思いますか、0~10の11段階で答えてください)においては、中間カテゴリ(5の周辺)に回答が集中することや、選択肢の分割の仕方によって回答傾向が変化することが知られている。
また(2)については、ある人が治療法について説明を受ける場合、「あなたの生活習慣に基づくと、Aの薬を飲むことで症状Bが改善する可能性があります」「あなたの生活習慣に基づくと、Aの薬を飲むことで症状Bが改善するかは不確実です」のどちらかで説明を受けたとする。この場合、どちらの説明も数値としては同じ程度(例:約31%)でAの内服が有効であると解釈されるにも関わらず、Aの内服を他人に勧めるかどうかは前者が約90%に対して後者は約32%と大幅な違いが生じうることが確認されている。さらにこの現象は、その人がもともとどの程度の確率を想定していたか(例:Aの内服によってBが劇的に改善することを期待していたか、どうせ変わらないと思っていたか)が、反応の違いを生むことも確認されている。

このような、言われてみれば当たり前とも思える、人それぞれ異なる人間の思考の”クセ”が、データの入力や解釈にもたらす影響に特に焦点をあてて、自己管理ツールが満たすべき要件を研究成果に基づいて議論するきっかけとしたい。