一般社団法人 日本医療情報学会

[2-H-1-02] IoTを用いた手指衛生モニタリングシステムのフィードバックと感染予防への効果

*出野 義則1,3、山下 芳範2、室井 洋子5、松山 千夏2、飛田 征男2、山下 佳子3、大山 慎太郎3、重見 博子4、坂本 祐二1、岩崎 博道2 (1. 株式会社ケアコム、2. 福井大学医学部附属病院、3. 名古屋大学医学部附属病院、4. 京都府立医科大学、5. 坂井市立三国病院)

IoT, Infection control, hand hygiene, electronic monitoring system, 5 moments

[背景]
 WHOの標準感染予防対策を遵守し、病原体の院内拡散を防ぐことは医療関連感染の予防に重要である。しかし、感染予防対策の1つである手指衛生(H.H.)は、職種や経験や勤務時間帯で確認すると、遵守状況にバラツキがあり十分とは言えない。個人防護具(PPE)の使用についても同様である。
[目的]
 院内感染予防対策は直接観察法や間接観察法にて評価が実施されている。前者はホーソン効果が働き、後者は使用者の特定が困難で、正確に医療従事者の現状把握ができない。この課題解決に、電波を用いるIoT(Internet of Things)にてPPEの使用とH.H.の実施を常時モニタリングし、その結果をフィードバックすることでH.H.の実施とPPE使用の遵守向上を目指した。
[方法]
 消化器外科病棟とICUに手指衛生モニタリングシステムを設置し、医師、看護師、薬剤師、理学療法士、補助者と消毒剤、液体石鹸、車椅子、PCカート、処置カートにIoTを装着し、屋内位置測定とH.H.の実施と看護行動認識を行い、データの可視化と個人別感染予防状況、職種別感染予防状況、機械学習による看護師行動を評価した。
[結果]
 手指衛生モニタリングシステムをICUで稼働させる前後で、手指衛生消毒剤の払出量を比較すると1.79倍、流水を含めた患者当たりの手指衛生回数は1.5倍に達した。手指衛生モニタリング中の6ヶ月間は、実施率が継続し回帰することはなかった。 入室は患者接触前、退室は患者接触後と患者周辺の物に触れた後の機会とし、水平伝播のリスクが確認できた。看護師行動から手指衛生が必要なタイミングの把握(清潔操作の前、体液に曝露した可能性の後)が可能となり、WHO5モーメント毎の遵守率評価が可能になると示唆された。