一般社団法人 日本医療情報学会

[2-I-2] AIを用いた画像解析および画像診断-医療画像関連6学会によるAMED事業の成果と課題

酒巻 哲夫1、*森井 昌克1,2 (1. 国立研究開発法人日本医療研究開発機構、2. 神戸大学大学院工学研究科)

AMEDの臨床研究等ICT基盤構築・人工知能実装研究事業における「画像関連データベース及び共通プラットフォーム構築関連研究」は平成28年度後半から開始され、6つの学会(日本病理学会、日本消化器内視鏡学会、日本医学放射線学会、日本超音波医学会、日本皮膚科学会、日本眼科学会)が日本全体の協力病院から医療画像を収集する基盤を構築するとともに、各医療ニーズに応じた画像診断AIを開発するプロジェクトである。
 この研究事業では、国立情報学研究所(NII)がAI開発を担うとともに国内の多くのAI研究者のハブ的役割を担い、AI開発用クラウド基盤を構築し、また各学会の臨床的課題をAI開発タスクに解き起こし、自らもAI開発を行うとともに進捗管理を行ってきた。
 なお、医療画像を各協力医療機関から収集するうえでのシステム要件整理、および収集した患者情報の扱いについての法的、倫理的問題整理は日本医療情報学会に委託して研究を推進してきた。
 このAMED研究事業での画像データベースは2.5億枚を超え、事業終了年度(令和3年3月)においてなお増え続けている。また、6学会がそれぞれ社会実装可能なAIプロトタイプを開発したことは社会的な意義が極めて大きい。
とりわけ学会が主体となることで、データベース構築が国全体の医療機関を包含して行われる素地となったこと、収集画像の質やAI教師用データにアノテーションを加えるときの質の担保が得られたこと、AI実装の場合の社会的コンセンサス形成に各々学会として活動してきたことなど、個々の研究者に公的研究資金を賦課するのとは異なる効果を得ている。
 6学会とNIIは個別に、あるいは全体として進捗会議を行い、アノテーションソフトウェアの開発と共有、AI開発者間の技術的共有などがなされた。このような学会横断的なAI開発環境は国際的にも例を見ないものであり、研究事業終了後も共同の場を維持しようとしている。
 本シンポジウムでは、各学会およびNIIでAI開発の主導的役割を果たした研究者から講演を頂く。単なるAI開発事例報告に止まることなく、今後の各学会の課題と解決策、AIの社会実装への試みについて明らかにする。