一般社団法人 日本医療情報学会

[2-I-2-07] 超音波画像ナショナルデータベース構築とAI支援による次世代超音波診断システムの実用化

*工藤 正俊1,2、西田 直生志1,2、椎名 毅1,3 (1. 日本超音波医学会、2. 近畿大学医学部消化器内科、3. 京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻)

ultrasonography, artificial intelligence, liver tumor, mammary tumor, heart disease

悪性腫瘍、心疾患は我が国の死因の1位と2位を占めるが、人口高齢化に伴いこれらの有病率は、さらに上昇すると予想される。一方、高齢化社会では、侵襲の少ない検査システムが求められる。超音波検査は非侵襲的で簡便性に優れ、日常診療で頻用されているが、初学者では正確な診断が困難な場合が多い。人工知能(AI)は超音波検査のヒューマンエラーを回避する有効な手段である。

日本超音波医学会(JSUM)では、AMEDの支援を受け、超音波画像のデータベース構築と超音波検査を支援するAIモデル開発に取り組んでいる。日本医療情報学会のガイドラインに準拠した独自のデータ収集システムを構築・展開し、現時点でJSUMのデータベースに肝腫瘍超音波画像と付帯情報101,093画像、乳腺腫瘍画像22,451画像、心臓超音波動画10,314画像が登録されている。これらのデータを用い、汎用性の高いB-mode超音波検査に使用できる肝腫瘍検出・判別支援AI、乳腺腫瘍検出・判別支援AI、循環動態判定支援AIモデルの開発が進められている。

肝腫瘍判別モデルに関しては、70,950画像を畳み込みニューラルネットワークの学習データとして用い、4疾患鑑別の正診率は91.0%、良悪性の2疾患分類では正診率94.4%、感度83.1%、特異度96.7%であった。このモデルは少数例の独立したテストコホートにより、肝腫瘍4疾患判別に関して、AIの正診率がヒト専門医を凌駕することが確認できた。一方、アルゴリズムとしてYOLOを用いた肝腫瘍検出モデルでは、再現率0.929、適合率0.906、F値0.917を達成している。現在、肝腫瘍の検出と判別モデルを統合し、肝腫瘍の超音波検査をリアルタイムに支援するAIモデルを構築、超音波機器に実装したプロトタイプ機器を開発している。さらにAIモデルとヒトを比較する臨床試験を行い、薬機法の承認と企業への導出を目指している。