Japan Association for Medical Informatics

[2-P-2-05] 上部消化管造影検査のためのバーチャルトレーニングシステムの開発

*Hayate Ozawa1, Kaito Oikawa1, Takayoshi Terasita1 (1. 群馬県立県民健康科学大学 診療放射線学部)

Upper gastrointestinal series, Radiological technology education, Virtual training system

目的
現在、日本では胃癌の罹患数が癌全体で2番目に多く、胃癌検診は早期発見の重要な役割を担っている。上部消化管造影検査はバリウムと空気による二重造影法でX線透視下にて検査を行う。検査中は多くの体位変換が必要とされ、長時間の検査になるため患者の負担が多い。また、透視時間の増加に伴い無駄な被曝も増えてしまう。患者の負担を減らし良質な画像を得るためには術者が高い技術を持たなければならないが、新人の診療放射線技師は十分なトレーニングに多くの時間を要する。放射線を用いることなく体位や物理現象に合わせて仮想的な透視像を得ることができれば安全にトレーニングを行うことが可能となる。そこで本報告では上部消化管造影検査のためのバーチャルトレーニングシステムを開発したので報告する。
方法
本システムは3D人体モデルとゲームエンジンを用いて仮想X線像の作成を行う。まず人体ファントムをCTで撮影し、ボリュームデータから臓器ごとの3Dモデルを作成した。X線は人体を透過する際に様々な組織によって減弱し、その強度分布がX線像となる。これを再現するために光線追跡法を使用した。光線追跡法は三次元コンピュータグラフィックスにおいて光の反射や影などをシミュレートする手法である。この手法を用いてX線源と検出器間の臓器オブジェクトの検出や透過したオブジェクトの厚さを計測する。オブジェクトの厚さに臓器に応じた減弱係数を乗じ、足し合わせることでX線像として描画した。ゲームエンジンはUnity(2020.3.11f1)を使用した。
結果
本システムでは撮影装置や胃、骨、体表面の3Dモデルをコントローラで操作し、仮想X線像を表示できる。また造影剤として、硫酸バリウムを模した多数の球を設置でき、それらは操作に応じた物理演算により動作するため造影像を表現できる。本システムを用いることで、上部消化管造影検査のスムーズな操作法が習得できる。