Japan Association for Medical Informatics

[2-P-3-04] 本邦の費用対効果分析研究におけるリアルワールドデータ活用の現状と課題

*Kota Kajiya1, Yasushi Hirano2, Haku Ishida3 (1. 山口大学医学部医学科, 2. 山口大学医学部附属病院 医療情報部, 3. 山口大学大学院 医学系研究科 医療情報判断学講座)

Cost-effectiveness analysis, Real world data, Observational study , Health technology assessment

1. 背景と目的
 費用対効果分析(CEA)では介入による効果、効用(QOL)変化、関連費用等に着目するが、リアルワールドデータ(RWD)は、臨床試験に比べ臨床現場をより忠実に反映する情報として重要である。本研究は、本邦のCEA研究を対象に用いられたRWDのデータ元、エビデンス創成のための統計手法等を調査し、その現状と課題を明らかにすることを目的とした。
2. 方法
 PubMedと医学中央雑誌から、RWD、CEAの関連用語を用い、2021年3月末までの検索で、822件の日本における論文を抽出した。題名、抄録、本文の精査から57件の論文を最終的な調査対象とした。対象論文の研究概要、使用RWDの特性、および患者特性、費用、効果、効用の各領域でのRWD活用状況を調査した。
3. 結果
 CEA研究デザインでは、費用効用分析が22件(39%)と最も多かった。用いられたRWDでは、単施設データが34件(60%)、多施設データが23件(40%)で、NDB等の大規模症例データの活用は14件(25%)と少なかった。患者特性では、RWDを用いた傾向スコアによる効果推定の調整での活用と、CEAモデルのパラメータとしての活用が各7件みられた。CEAの費用には50件、効果には42件(再治療発生率16件、入院期間14件、死亡率14件等)RWD活用がみられたが、RWDの対象特性の違いを多変量線形回帰モデル等で調整したものは各5件だった。効用でのRWD活用は14件で、効用値の実測が6件、他8件は痛みスケール等からの効用値への変換であった。
4. 考察・まとめ
 今回調査の結果、RWDにおけるバイアスの影響を調整する傾向スコア法や、複数因子の影響を考慮した多変量回帰モデル等から得られたエビデンスの活用は比較的少数であった。これらは、内的妥当性や一般化性の低いCEA結果につながる可能性があり、今後のRWD活用の重要な課題と考えられた。