一般社団法人 日本医療情報学会

[2-P-4-05] 高齢者ポピュレーションへ注目した抗コリン副作用の解析.JADERの臨床への活用法検討

*響谷 学1、藤井 光2、宇野 希世子1 (1. 帝京大学臨床研究センター, 2. 春日部市立医療センター薬剤科)

JADER, pharmacoepidemiology, data mining, pharmacist, anticholinergic drug

【背景】高齢者には慢性閉塞性肺疾患や過活動膀胱など,抗コリン副作用を有する薬剤が投与される疾患が多い.原疾患の治療に重点が置かれ,口渇や羞明などの見過ごしや,尿閉やイレウスとなり治療が必要になることがある.近年発売された3剤配合吸入剤は抗コリン副作用が生じることが薬理学的に予想できるが,実臨床で十分なリスク評価はされていない.【目的】副作用自発報告データベース(JADER)を用いて、抗コリン作用を持つ薬剤による抗コリン副作用の確認が可能か検討する.【方法】JADER登録の60歳以上,欠測値のない1,268,229件を解析対象とした.口渇,視覚異常,尿閉,イレウスを抗コリン副作用と定義した.主解析として慢性閉塞性肺疾患,過活動膀胱治療薬の抗コリン副作用の調整済み報告オッズ比(Reporting odds ratio, ROR)を算出した.また3剤配合吸入剤2種について,それぞれの発売年1年間で同様の解析を行った.メディカルオンラインにて各疾患の治療薬として該当するすべてを対象とした.【結果】吸入薬ではチオトロピウムが最も調整済RORが高く29.7(95%信頼区間:22.2-39.2),過活動膀胱治療薬ではフェソテロジンが516.1(442.6-601.7)であった.3剤配合吸入剤のブデソニド・グリコピロニウム・ホルモテロールは発売年1年間で調整済みRORが6.0(1.4-25.2),フルチカゾン・ウメクリジニウム・ビランテロールは11.0(5.0-24.3)だった.【結論】抗コリン作用を持つ薬剤の調整済RORが高いことをJADERにより示すことができた.RORは単体ではリスク指標として問題が指摘されるが,症状がその薬剤による副作用かの判断材料の一つとして利用でき,臨床での活用の可能性,リスク研究のきっかけとなることが示唆された.