一般社団法人 日本医療情報学会

[3-A-3] 研究から社会実装に向けた医療データ利活用への展開   
個人情報保護法や次世代医療基盤法などの枠組みでの活用

*中島 直樹1,2、高林 克日己3,4 (1. 九州大学病院 メディカル・インフォメーションセンター、2. 日本医療情報学会、3. 国立研究開発法人日本医療研究開発機構、4. 医療法人社団鼎会 三和病院)

Personal data, Commercial Use, Exit Strategy, Dynamic Consent, Opt-in

日本医療情報学会では、2020年度にAMED・日本病理学会研究事業の「病理診断支援のための人工知能(病理診断支援AI)開発と統合的「AI医療画像知」の創出」の分担研究として「健康医療情報の商用利用も含めた2次利用のための同意取得の方法の法制度・倫理課題抽出、およびワークフロー整備に関する研究」を受託した。2017年の改正個人情報保護法により、要配慮個人情報となった健康医療情報は第三者への提供には個別同意が必要となった。研究に用いる場合は「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」に基づきオプトアウトで研究実施が可能な場合もあるが、それを企業によるAI製品の開発等の商用目的に供する場合は、新たに患者から個別同意を取得するか、匿名加工化する等の措置をとらねばならない。また、いわゆる次世代医療基盤法(2018年施行)に則り、認定匿名加工医療情報作成事業者が匿名加工化する場合には「通知によるオプトアウト」手続きを必要とする。さらに、診療目的に取得された情報や試料の未使用分を、将来実施する様々な研究に利用すること等について、個々の患者から書面等で同意を取得する「包括同意」のうちある程度範囲を限定する「broad consent」では、将来のあらゆる研究に関して十分に有効かどうかは、不安の残るところである。加えて、新しい同意の取得手法として、スマートフォン等のモバイル端末による電子的な動的同意取得dynamic consentの実装も期待される。本研究事業では、健康医療情報の商用利用も含めた2次利用のための同意取得の方法として「通知によるオプトアウト」、「包括同意」、「dynamic consent」を取り上げ、これらの法制度・倫理課題の抽出、およびワークフロー整備を行い、「手引き」等を作成した。本ワークショップではAMEDの枠組みで実施した日本医療情報学会における取組の紹介、その後の展開などについて、法学や医療倫理学の関係者も交えて議論し、論点整理を行う。