一般社団法人 日本医療情報学会

[3-B-2-01] 看護のブラックボックスから、DXによりいきいきした看護の現場を映し出し付加価値を創造する

*斎藤 いずみ1 (1. 神戸大学大学院保健学研究科)

mixed hospital ward with an obstetrical department, work hours for nursing care, Overlap, dying patients and patients to give birth

DXという活字はよく見ますが、正確にその意味をわかっていませんでした。ではなぜ、そんな私が、何倍もよくご存じの本学会の皆様に、シンポジストとしてお話しすることになったのでしょうか。
私が1990年代中盤から取り組んできたこと、それは人の目に触れる事の少ない、「分娩時の看護場面」をデータ化し、お産の現場で何が起こっているのかをお伝えしたいと思ったことです。一人の助産師として、テレビで繰り広げられる「おめでとうございます。母児ともお元気です」という場面の陰に、その母児の安全を作り出すために、どれほどの医師と助産師と看護師の介入が直前まで繰り広げられていたのかを、伝える必要があると思いました。何もなく無事生まれるというのは幻想です。直前まで胎児心拍数が減少し、時には母子の生命の危機的状況を回避し、医療者が作り出した「母児ともに無事の場面」が真実の姿なのです。
まず、助産師と看護師の看護行為と看護時間に着目しました。分娩時の看護の可視化は意外にも、世界的にも実施されていないことがわかってきました。なんという種類の看護行為の組み合わせなのか、またそれらの看護行為は正常な経過の平均的な事例では、何分間くらい実施されたのか、そんな基本的なことでさえ、測定や一般化はされていませんでした。
24時間いつでも分娩は発生し、一事例の入院から胎盤娩出後、出血の可能性があり危険とされる120分間の分娩第4期終了まで観察すると、初産婦であれば平均的事例でさえも20時間弱、経産婦ですら10時間弱の観察時間が1事例に対し必要になります。そのため、入院から分娩第4期終了までに投入した全看護行為と全看護時間を測定することが、いかに難しいかというデータ化されにくい背景がありました。
当日は、根性で収集した「分娩時」のタイムスタディデータと、少しばかり進歩し情報通信機器を用いて測定した「産科混合病棟全体」のデータをお示ししながら、今産科に何が起こっているのか、市民の皆様が知らない危険性は何かを、お伝えできればと思います。そしてこれらを基本に、新たな看護の付加価値を見出すことができればと考えます。