一般社団法人 日本医療情報学会

[3-C-3-04] 国際的なDE&I潮流の中で問われる日本の本気度

*塚原 月子1 (1. 株式会社カレイディスト)

近年の国際潮流において、Diversity, Equity & Inclusionというように、Equity(公正)という概念が強く打ち出されるようになった。多様な人々が尊重され、真に活躍できるためには、異なる人々に全く同じ対応をとること(Equality=平等)ではなく、機会において等しくなるようそれぞれに適切な対応をとること(公正)が求められるという考え方である。 国際社会は、以下3つの観点から、組織が持続可能な成長を遂げる上で不可欠であるという認識に基づきDE&Iに取り組んでいる。
①健全なガバナンス
②選ばれる雇用者
③革新を通じた成長
ダイバーシティの高い企業はイノベーション収益も高い(Harvard Business Review "How and Where Diversity Drives Financial Performance")といったことは様々な調査研究機関により検証されているが、それらは上記のメカニズムが機能する結果と考えられる。
日本では、実直な女性活躍推進の取り組みと裏腹に、その進捗は国際社会において相対的に遅い。「数値目標を設定してまで女性活躍をするのは逆差別だ」「女性だけではなく様々な多様性に目を向けるべきだ」といった一見正論に思われるような主張も見られる。たしかに、ジェンダーはダイバーシティの一側面に過ぎないが、そこに厳然と存在する問題を解決することすらできずして、国際社会が求めるD, Eの先のInclusionを実現できるのか。
日本の組織は、不公正な現状を直視して、あるべき姿とのギャップをできるだけ定量的に特定しなければならない。そのギャップを埋める上で、取り組みやすいことだけでなく、構造的な部分に触れるような施策にも手を付ける段階に来ている。例えば、様々な研修の取り組みは盛んであるし、日本の両立制度は国際的にも遜色ない水準になりつつある一方で、働き方やキャリアパスが異なる多様な人材が、固定観念にとらわれず評価され、人材パイプラインの核を形成するための取り組みなどは十分とは言えない。ジェンダーにおいて後進国であることがそのまま持続可能な成長において後進国となってしまわないように、日本の本気度が問われている。