Japan Association for Medical Informatics

[3-D-1-02] ヒト心房の3次元モデルに基づく心房細動興奮伝播様式の再現を目指した電気生理学シミュレーションと可視化

*Yusaku Kishida1, Tomokazu Urata1, Naoki Ohboshi1, Akira Miyazaki2, Takashi Ashihara3, Kensuke Sakata4, Nitarou Shibata5, Takashi Iziri6, Kenshi Takayama7, Shuya Shida8, Yoshiaki Hara8, Shin Inada8, Kazuo Nakazawa8 (1. 近畿大学 理工学部 情報学科, 2. 市立奈良病院, 3. 滋賀医科大学 情報総合センター, 4. 滋賀医科大学 循環器内科, 5. 新宿三井ビルクリニック, 6. 芝浦工業大学 工学部 情報学科, 7. 国立情報学科研究所 コンテンツ科学研究系, 8. 森ノ宮医療大学 保険医療学部 臨床工学科)

arrhythmia, atrial fibrillation, Non-paroxysmal atrial fibrillation

[背景]
心房細動は不整脈の一種であり、心不全や脳梗塞などの主な原因となる。わが国だけでも患者数が100万人にも及ぶ有病率の高い疾患である。心房細動の複雑な興奮伝播様式とそのメカニズムについては、未解明な部分が多く、その治療においても経験則に頼らざるを得ない実態がある。心房細動の持続メカニズムの解明のため、興奮伝播様式を可視化する必要がある。

[目的]
ヒトの3次元心房の形状モデルを作成し、電気生理学的なコンピュータシミュレーションを実施して、心房細動の複雑な興奮伝播様式を可視化する。心房細動の典型的な症例を再現し、有効な治療戦略構築に向けたシミュレーションと可視化システムを開発する。

[方法]
MRIデータを元にヒトの3次元心房の形状モデルを作成し、電気生理学的なコンピュータシミュレーションを実施した。シミュレーションで用いるMRIデータから作成したモデルだけでは、心筋組織の心外膜面と心内膜面のみで構成されたサーフェスモデルであるため、心筋内組織を含めたユニットモデルへ変換した。作成したユニットモデルにヒト心房細胞の活動電位を再現することが可能な微分方程式モデルを組み込み、心房内の不整脈を想定した電気生理学的シミュレーションを行った。その後、シミュレーション結果に基づき心房の興奮伝播様式を可視化した動画を作成した。

[結果と考察]
3次元心房形状モデルにおいて、初期の発作性心房細動の興奮伝播を仮想的に表現することができた。しかしながら、臨床で見られる典型的な非発作性心房細動の症例の再現までには至っていない。今後は、非発作性心房細動の再現に向けて、ユニット数を増やして大規模なシミュレーションの実施と有力なパラメータの同定を図る必要がある。シミュレーションによる理論的な非発作性心房細動の治療戦略構築と、結果をより見やすくわかりやすいものにすることを目標とする。