[3-D-1-03] 深層学習で作成したリスクスコアを用いた治療効果比較研究
Deep Learning, Administrative data, Causal Inference, Target trial emulation
【背景】観察データを用いた治療効果比較研究は、重要度を増している。精度の高い患者リスクスコアは、重症度調整を行う上で重要である。我々は過去、日本のDPC データを用い、入院初日の医療行為と診断情報から院内死亡を深層学習で予測するモデルを構築した。モデルから得たリスクスコアは高い死亡予測精度と、実リスクとの対応を有していた。しかし、このリスクスコアを用いた治療効果比較研究は未だない。そこで、本研究では、構築したリスクスコアを用いて、心不全患者における早期食事開始が院内死亡率に与える影響を検証し、過去に同一データソースを用いて実施された研究と比較する。これにより、リスクスコアの可用性を検討した。 【方法】厚生労働科学研究DPCデータ調査研究班のDPCデータを用いた。2010年7月-2017年3月の期間中に対象病院(1492病院)にNYHA II以上の心不全で入院した20歳以上の患者をデータベースから抽出した。在院日数が2日以下の症例を対象から除外した。入院2日以内に食事を開始した症例を早期食事開始群、2日目以降に開始した症例を対照群とした。アウトカムを院内死亡とし、ロジスティック回帰を用いて、リスクスコアを調整した早期食事開始のオッズ比と信頼区間を計算した。重症度の高い症例と低い症例で早期食事開始の効果が異なると考えられたため、リスクスコアと早期食事開始の交互作用項をモデルに投入した。 【結果】354820名を解析対象とした。モデルから計算された早期食事開始のオッズ比は0.49(95%信頼区間0.46-0.51)であった。早期食事開始とリスクスコアの間には強い交互作用が認められた(オッズ比32.2(95%信頼区間26.3-39.3))。 【考察】得られた結果は、過去に実施された研究と矛盾しない結果であった。リスクスコアを用いた因果推論の実施可能性を示すものであると考えられた。