Japan Association for Medical Informatics

[3-D-1-05] 臨床推論に真に有用なプログレスノートの構成の実験的探索 ー多職種の読み手が感じる有用性と書き手の医師の負担に着目してー

*Rina Kagawa1, Hiideo Tsurushima1 (1. 筑波大学)

EHR, progress note, cliinical reasoning, interprofessional communication

診療録が担うべき役割の1つは、臨床推論に必要な情報を効率的に保存した上で多職種の医療従事者にわかりやすく提示することである。医師が自然言語で記載するプログレスノート(以下、PN)は、診断にいたる思考過程などの多様で複雑な情報を格納でき、この役割を効率的に担える潜在的な可能性を持つ。PNはSOAPの記載の枠組みが普及している。その一方で、SOAPに従っても記載には自由度が高く記載が医師ごとに異なり、臨床推論に有用でない記載も存在しうる。 我々は、多職種の臨床推論に有用なPNに記載されるべき内容と、多職種の臨床推論に有用な記載は医師にどの程度負担を与えるか、を明らかにしたい。本研究では第一段階としてweb上の実験環境で実験を行った。Ciminoらの成果を参照し臨床推論に利用される情報として、判断理由、一般的な医学知識、介入意図などの7つの要素を検討対象とした。 PN(以下、元文書)から上記7つの要素の記載をそれぞれ欠落させた実験用文書を作成した。実験参加者(医師11人、看護師30人、その他医療従事者33人)が、元文書と実験用文書に、臨床現場での意思決定に有用だと感じるか10件法で回答した。医師が読み手の場合、7つの要素全てで元文書と実験用文書の点数の平均値に有意差が認められなかった。その一方で、医師以外が読み手の場合は、5つの要素で実験用文書の有用性の点数が元文書と比較して有意に低下した。 なお、利用したPNは、筆者らが先行研究において作成し公開した擬似文書であり実在する患者のものではない。本研究は筑波大学附属病院研究倫理審査委員会の承認を得ている(H30-145, R2-310)。現在、医師の記載の負担も取得している。また、医療従事者は同じ職種であっても経験によって背景知識が大きく異なる可能性がある。今後は読み手の背景知識も実験的に取得して詳細な議論を行いたい。