[3-F-3-05] マルチタスク学習を用いたFunctional Independence Measureの経時変化予測
Multi-Task Learning, Progression Prediction, Functional Independence Measure
回復期リハビリテーション病院にとって、入院時の患者情報から、退院時や退院後半年、1年後等の複数時点のFunctional Independence Measure(日常生活動作に関わる運動/認知機能の指標)の合計点(以降、FIMスコア)を予測することは、患者個別のリハビリ計画に重要である。 この予測は、時点ごとに、入院時の患者情報とその時点のFIMスコアのペアの情報を学習データとして用意し、予測モデルを学習することで実現できる。一方で、近年、複数の予測モデルを同時に学習するマルチタスク学習の研究が進んでおり、このマルチタスク学習を、時点ごとのFIMスコアを予測する予測モデルの学習に用いれば、各時点の予測精度が高まるのではないかと考えられる。 そこで本研究では、各時点の予測モデルを1つのタスクとし、複数時点分の予測モデルを同時に学習するマルチタスク学習をFIMスコアの予測に適用する。マルチタスク学習では、タスク間の関係性の定義が重要となるが、本研究では、FIMスコアの経過と発症からの日数が対数関数によく当てはまるという従来研究の知見を、タスク間の関係性に用いる方法を提案する。 公開データを用いて、入院時の患者情報(45種類)を入力とし、3時点(退院時、退院半年後、1年後)のFIMスコアを予測する予測モデルを構築、評価した。3時点の学習データ数は、それぞれ、1202、1056、834であった。10-fold交差検定の結果、マルチタスク学習を用いた場合は、マルチタスク学習を用いない場合と比べて、退院半年後と1年後では、予測誤差(二乗平均平方根誤差)がそれぞれ0.33、0.24(p<0.05)小さかったが、退院時では差はなかった。この結果から、提案するマルチタスク学習手法を3時点のFIMスコア予測に適用した場合、退院半年後と1年後のFIMスコアの予測精度向上に有効と考えられた。