Japan Association for Medical Informatics

[3-F-3-06] AIを用いた定量的かつ動的な転倒転落リスクの解析

*Shinya Sonobe1,2, Mizuki Kadowaki3,4, Tetsuo Ishikawa5,6, Eichi Takaya1,5, Hiroko Sugawara7, Atsuhiro Nakagawa2,4, Masao Tabata7, Takuya Ueda1,5, Eiryo Kawakami5,6, Teiji Tominaga2 (1. 東北大学病院 AI Lab, 2. 東北大学病院 脳神経外科, 3. University of California San Diego, 4. 東北大学病院 臨床研究推進センター バイオデザイン部門, 5. 東北大学 大学院医学系研究科 保健学専攻 生体応用技術科学領域 画像診断学分野, 6. 理化学研究所 情報統合本部 先端データサイエンスプロジェクト, 7. 東北大学病院 医療安全推進室)

fall risk, incident report, artificial intelligence, unsupervised learning

【目的】 入院中における転倒転落のリスク因子として、年齢、低血圧、認知機能障害の有無、神経症状の有無、排尿機能低下の有無、転倒転落歴の有無、低栄養、特定の薬物の内服、喫煙、心疾患が報告されており、転倒転落リスクの評価に用いられている。しかしこれらの情報は日々の変動が少ないため、どのような症例で転倒転落リスクが高いかを示すのには向いているが、どのような状況で転倒転落リスクが高いかを示すのには向いていない。我々はこの度、より定量的かつ動的なリスク因子を抽出するために、AIを用いて解析した。
【方法】 インシデントレポートで転倒転落が報告された肺癌症例188例を転倒群とし、インシデントレポートで転倒転落が報告されていない肺癌症例228例を非転倒群とした。脈拍数、体温、白血球数、血小板数、ヘモグロビン値、総蛋白量値、LDH値、CRP値、D-dimer値の値をもとに、クラスタリングの手法を用いて転倒群を分類した。得られたサブグループにおいて、25パーセンタイル値ないし75パーセンタイル値が母集団の平均値を超えて偏倚している特徴を抽出し、これらの特徴を持つ症例が転倒群と非転倒群にどれだけ存在するか比較した。
【結果】 A、B、C、D、E、の5つのサブグループが検出された。AとBは際立った特徴を持たない、Cは白血球数と血小板数が高い、Dは総蛋白量とヘモグロビン値が低くD-dimer値が高い、Eは総蛋白量とヘモグロビン値が低く脈拍数が高い、という結果であった。それぞれの特徴を持つ症例の割合は、Cが転倒群:37.8%で非転倒群:22.7%(p<0.01)、Dが転倒群:22.9%で非転倒群:4.7%(p<0.01)、Eが転倒群:28.2%で非転倒群:14.2%(p<0.01)であった。
【考察】 AIは複数の因子からなる複合要因の解析に強く、過去に報告の無い複合的なリスク因子を検出できる。