Japan Association for Medical Informatics

[3-H-2-04] 地域医療連携システムを用いた専門医による治療アドバイスの予後改善効果の検討

*Keisuke Ido1, Ryusuke Inoue1, Satoshi Miyata2, Hiroaki Shimizu3, Masaharu Nakayama1 (1. 東北大学, 2. 帝京大学, 3. 秋田大学)

Electronic Health Record, Health Information Exchange, Randomized controlled trial

【背景】地域医療連携システム(EHR)は、患者の検査値等を共有することで、治療を行う医師に専門家のアドバイスを提供し、診断精度や治療効果、安全性を向上させる可能性がある。しかし、EHRに関するこれまでの研究は、ほとんどが観察的なものであった。 【目的】専門病院の少ない地域における一般開業医(GP)がEHRを介して専門医と連携することで、心血管疾患、腎臓疾患、脳卒中の低~中リスク患者の転帰を改善できるかどうかを検討する。【方法】宮城県医療福祉情報ネットワーク(MMWIN)を利用し、ランダム化比較試験を行った。対象は、宮城県の農村・沿岸部に住み,開業医からのみ診療を受けている65歳以上の患者で、2015年11月から2016年9月まで1,092人を登録し、臨床データを循環器専門医、腎臓病専門医、脳卒中専門医で評価した。高リスクの患者は直ちに専門医に紹介するようGPに伝え、低~中リスクの患者はGPがMMWINを通じて専門医からアドバイスを受ける介入群(n=518、男性38%、76±7歳)と、GPが専門医からアドバイスを受けない対照群(n=521、男性39%、75±7歳)とに無作為に割り付けられた。その後半年、および1年後に予後を調査した。 【結果】intention-to-treat解析では、全死亡率と重篤な有害事象(入院や予期せぬ専門医への紹介など)の累積発生率は両群間で有意差はなかった。しかし、専門医の勧告をGPが遵守している群とそれ以外に分けたper-protocol解析では、遵守群は対照群に比べて全死亡率(P = 0.04)と重篤な有害事象の累積発生率(P = 0.04)を有意に減少させた。 【結論】地域医療連携システムは、特に地域の専門医が少ない農村・沿岸部において、専門医とGPの連携を促進することで、低~中程度のリスクの患者の転帰を改善する可能性が示唆された。