一般社団法人 日本医療情報学会

[4-A-1-04] 診療情報コンテンツの標準化と共有をどのように教育するべきか

*渡邉 直1 (1. 医療情報システム開発センター)

Education of Clinical Informatics, Standardization, Patient Summary, Functional Evaluation, PHR

診療情報の利活用には大別して2つがあると言える.
 一つは二次利用であり,その主体は健康科学研究の原資としての活用(端的にいって,要配慮個人情報である診療情報を可及的に匿名化しつつ利活用する共有法)である.比較的閉じた環境で実践されてきた医学研究(RCTや種々の観察研究)に近年LHSが加わり,多施設において日常的な診療データの中から必要物を抽出し,多量のreal world dataの集積,検証の中から新たな知見を得ることの重要性が増すにつれ,どの施設からも共通に抽出可能な,構造化された標準的なデータのあり方がより求められることとなった.この標準化の推進,データ構造の統一,蓄積法の洗練,患者IDの明確化などの迅速な確立が要請されており,このためのdata health scientistの養成とともに,卒前教育の段階より,基盤の理解を獲得させ,日常診療の中からのデータの有効な集積についての意識的な取り組みを促すことが必要となると考えられる.
 一方で,診療情報の一次的利活用は,いわば要配慮個人情報そのままの共有であり,ここでは「患者のデータ」が主体なのではなく,「患者」自体が主体であるという認識,臨床姿勢がまずもって要請される.複数疾患を慢性的にかかえつつ生活することが常態である高齢化社会における患者の健康情報をいかに包括的に捉え,この健康情報を急性期,慢性期,在宅,介護施設の連携による健康管理の仕組みの中でどのように共有可能な“言語”,“構造”に落とし込んで伝達連携できるかが,特段に問われていると言えよう.
 この観点から診療情報の核としての退院時サマリーや外来interim summaryを取り上げ,さらに病名基軸の患者把握と車の両輪をなすべき生活機能サマリーの構築の必要性に言及,さらにこれらからいわゆるpatient summaryを確立する方向性について語ってゆきたい.