一般社団法人 日本医療情報学会

[4-F-3-03] ICFに基づく生活機能評価の臨床導入に向けて

*向野 雅彦1、山田 深2、出江 紳一3 (1. 藤田医科大学医学部 リハビリテーション医学I講座、2. 杏林大学医学部リハビリテーション医学教室、3. 東北大学大学院 医学系研究科障害科学専攻 肢体不自由学分野)

ICF, Functioning, Rehabilitation

国際生活機能分類(以下ICF)は、WHOによって2001年に公表された生活機能の分類である。ICFの公表以来、生活機能評価の重要性は広く認識が進んでおり、2018年に公表された国際疾病分類(以下ICD-11)では、生活機能評価に関する補助セクションとして第V章が新設された。一方で、これらの分類は、臨床現場における普及はまだ進んでいない。この問題に対し、我々は様々な取り組みを実施してきた。
まず、ICFにおける分類項目の難解な定義が普及を阻む要因の一つとなっているという考えの下、”簡潔で直感的な説明文”の作成に取り組んだ。”簡潔で直感的な説明文”は分類項目の簡潔な説明文で、国際的な枠組みで作成が進められてきた。日本においてもこの動きと連携して専門家会議を開催し、ICFやICD-11V章の項目群に対し”簡潔で直感的な説明文”の作成を実施した。
さらにより実用的な仕組みとするため、採点用のリファレンスガイドの作成にも取り組んだ。ICFの評価点には、採点基準について詳細の説明がなく、検者間信頼性が低いことも普及の妨げとなっていた。この問題に対し、ICD-11第V章におけるICF由来の項目群を対象に、採点用リファレンスガイドを作成した。このリファレンスガイドを使用して実施したフィールドテストでは、一般的にADLとして評価対象となる歩行や更衣、排泄などの項目に加え、活力及び欲動の機能、睡眠機能、日課の遂行など、これまで評価対象とされることが少なかった多くの項目においても患者が問題を抱えていることが明らかとなり、ICFの使用によって患者の生活機能の問題を従来よりも広く捉えることができる可能性が示された。今後は、実際の臨床における適用にあたってより個々の病期、環境等に応じた評価セットの作成に取り組む予定である。