Japan Association for Medical Informatics

[4-G-2-04] 重症系部門システムのデータ活用-看護診断の診断可能性を算出する人工ニューラルネットワークモデルの構築を通して-

*Ryota Nishi1 (1. Center Hospital of the National Center for Global Health and medicine (NCGM))

クリティカルケア領域においては、集中治療を必要とする患者のデータを集約管理するために重症系部門システムが用いられる。重症系部門システムでは、バイタルサインや血液ガス、薬剤、経過記録など多様なデータが取り扱われ、主たる記録記載者は看護師である。患者の状態をリアルタイムかつダイレクトに反映する客観的情報として、臨床判断支援への活用が期待され、患者の転帰予測などに多く用いられている。 今回、我々は重症系部門システムのデータの中でも、患者本人やその周辺で発生した特筆すべき事柄が記載されている経過記録から、患者の抱える健康上の問題を把握するために用いられる看護診断を導出することで、看護師の臨床判断支援を目指した。重症系部門システムの経過記録及び電子カルテの個別の看護診断の有無を教師データとするデータセットを用いて、人工ニューラルネットワークの学習を行い、看護診断の診断可能性を算出するモデルを構築し検証を行った。対象看護診断全てにおいて経過記録のベクトル化にTF-IDFを用いたモデルがAccuracyおよびPR-AUC共に最も高い値を示し、Accuracy0.705~0.911、PR-AUC0.486~0.929となった。また、ナイーブベイズを用いたモデルと性能比較を行った結果、人工ニューラルネットワークモデルがAccuracyおよびPR-AUC共に高い値を示し、分類器としての優位性を示した。 人工ニューラルネットワークを用いて、重症系部門システムの経過記録から看護診断の診断可能性を算出した研究は、本研究が初めてであり、今後の研究の基盤となる成果が得られた。重症系部門システムには経過記録以外にも多くの定量・定性データがあり、活用することでモデルの性能向上が期待できる。本研究が、看護におけるリアルワールドデータとしての記録の利用の機運を高め、新たな価値・可能性の創出に繋がると共に、記録への理解を深める一助になることを期待する。