一般社団法人 日本医療情報学会

[1-H-2-01] 病院情報システムにおけるリアルタイム・ビジュアリゼーションを実現する、SDMデータモデルを採用したEMR一体型のDWH基盤構築とその評価

*飯田 征昌1 (1. 蒲郡市民病院)

蒲郡市民病院は、名古屋市立大学病院が独自に構築・保有する電子カルテ(EMR)システムNeoChartを2021年5月より導入し、診療情報の集約に基づいたデータ利活用モデルを強力に推進している。
 その情報基盤となるEMRデータベースは、多様な形式のデータを汎用的に格納可能なドキュメント指向モデルを採用し、各システム・医療機器から発生する診療情報を同一データベースで永続性を確保しながら集約可能である。更に、XML形式で格納された情報をリアルタイムに解析し、最小単位の情報で構成するKey-Value Store(KVS)方式のデータベースを同時に構築することで、データ構造に依存しない汎用的な格納と高速なデータ検索・抽出を両立している。
 本院では、EMRデータベースの特性と集約された情報を最大限に活用するアプローチとして、先述のKVSを用いたSQLビューを多様に展開し、EMRデータベースの情報をそのままDWHデータソースとして利用する手法を確立した。これに加えて、SDM規格を本院DWHの標準データモデルとして採用することにより、独自のEMRはじめ様々なシステムから集約された情報を、リアルタイムかつ一意のデータモデリングによって利活用可能とした。
 現在、様々なツールを用いて、DWHデータのリアルタイム抽出やダッシュボード作成による可視化を行い、運営マネジメント指標のタイムリーかつ多面的な情報提供の実現をはじめ、新たな診療・業務支援機能の開発や臨床研究の効率化など、医療現場の課題解決に繋がるデータ利活用の拡充を日次推進するところである。
 SDM規格に準拠する最大のメリットは、統一されたデータ構造・意味を利活用のスタートラインとすることで、意味解釈の統一や分析プロセスの共有が容易になり、効率化やスケールメリットの促進、データと分析の品質向上に資する点が挙げられる。今後、医療現場における応用の評価に基づいて、仕様拡充やデータ解釈に関する提案など、SDM規格の有用性向上と共有に努めたいと考える。