一般社団法人 日本医療情報学会

[1-H-2-05] ユーザー視点にたったヘルスケア共通データモデル

*鈴木 英夫1 (1. 一般社団法人SDMコンソーシアム)

医療情報に関しては、医療情報システムにより発生源で入力されたデータが保存される。その保存されたデータは他の医療情報システムとは互換性が無いため、システム間でメッセージやファイルの送受信により情報が伝達されている。この情報伝達において様々な標準化が提案されてきているが、各システムにおいて保存されている情報の粒度、頻度、精度が異なるため、伝達における情報ロスは避けられないのが現状である。さらに、二次利用のDWHにおいては、医療情報システムで保存されているデータに対して、抽出、加工、登録(ETL)という処理を経て保存されるので、発生源のデータと比較して、粒度、頻度、精度が落ちることになる。
 そこで、医療などの行為を表すために最低限必要な情報を共通項目とし、専門的な項目を個別項目とするセマンティック・データモデル(SDM)を定義した。このSDMにおける共通項目は、行為を表現する普遍的なもののみを定義しているため、専門知識を有していなくても利用できるのが特徴である。具体的には、「いつからいつまで」「どこの場所、あるいは組織で」「どの立場の者が」「誰のために」「何をどのように行った」などを定義している。医療の世界では例えば「処方オーダ」という行為のオーナーが「医師」であり対象が「患者」となる。オーダと言う行為は他部門への依頼だが、依頼を受けた側にも、今度は「実施」という行為が記録される。もし、オーダと実施の双方の行為を関係付ける分析を行う場合には、これらのテーブルを、共通項目により結合する。医療のSDMにおいては、このように医療行為毎にテーブルを持ち、それぞれが共通項目で結合可能となる。この普遍的な共通項目を持ったSDMは、健康、介護など個人の生活に関するサービス行為も表現可能である。本ワークショップでは健康維持、介護アラートなどへのSDMの拡張計画について報告する。