一般社団法人 日本医療情報学会

[2-A-1-03] AI表情解析よる精神疾患診断について

*近澤 徹1 (1. 株式会社Medi Face)

うつ病をはじめとした精神疾患のスクリーニング手法は様々あるが、どれもが医師等の視覚や対人コミュニケーションによるスクリーニングで鑑別している。一方で人に代わる存在としてAI技術が挙げられる。AIによる対話技術や、表情トラッキング技術は、人と完全に代替できるものでは無いものの、スマートフォン等に組み込まれている対話エージェントは、日常会話をもこなせる領域に技術が達している。これらを含めると、うつ病のスクリーニング手法を対話AIや表情トラッキングAIによって実施することが、対人で行うスクリーニングと同等もしくはそれ以上の鑑別が可能になるのでは無いかと考える。これは、身体的指標をデバイス等でトラッキングし、AI技術でデータ加工・分析を行うことをマルチモーダルに組み合わせることで、AIによる鑑別技術の向上を図れる可能性のもと、仮説として挙げる。例えば、スクリーニング対象者の発話内容や、表情の変化、声の揺らぎなどの様々な身体的指標が挙げられる。この研究では、うつ病の既存スクリーニング技術等や、AIによる診断支援技術等を先行研究として捉え、あらゆる医学的知見をAI技術に取り入れていくことを最終的なゴールとしたい。
また、認知症の日常診療においては最初に問診と神経心理検査が行われる。神経心理検査は必須であるものの、その再現性が比較的低く、患者の気分や生活上の出来事などの存在、治療の副作用、試験反復による学習効果など、検査成績にその他の要因の影響が反映されるおそれがある。このため、認知症の客観的なバイオマーカーが補助診断法として必要とされる。日常臨床において本邦でよく用いられる画像診断としては、MRIと脳血流SPECTが挙げられる。MRI装置は広く普及しており、放射線被曝もないが、その所見は非特異的なことが多く、所見の解釈が難しい。SPECT装置は疾患特異的所見が得やすいが、MRIほど普及しておらず検査費用も高額である。本研究では、認知症のスクリーニング検査としてMRI、脳血流SPECTよりも手軽に身体的指標からスクリーニングする方法を提案する。例えば、発話内容や表情の変化、声の揺らぎである。これらの身体的指標から認知症のスクリーニングを可能にすることにより、コストの削減に貢献することが期待される。
本講演では、「医療×AI」を軸に将来の医療のあり方を検討していく。