疾患別リポジトリをはじめとする大規模な診療情報データベースが構築・運用されてきており、医療機関の外部と情報を共有・収集し解析する多施設間の研究利用も盛んに行われている。また、次世代医療基盤法にみられるように、集積された診療情報の研究開発や公益目的への二次利用は今後さらに促進されることが期待される。一方で、改正個人情報保護法の施行や医学系研究に関する倫理指針の改正に見られるプライバシー保護や患者同意の管理への対応は必須の課題でもある。

2019年度まで実施されたJST CREST「ビッグデータ統合利活用のための次世代基盤技術の創出・体系化」研究プロジェクトでは大規模データの二次利用とプライバシー保護への課題に対し、クラウド上に電送・保管される診療情報の安全管理、分析・二次利用に対するプライバシーリスク評価を中心にその要素技術とシステムイメージについて検討を重ね、パイロットシステムを実証した。

本プロジェクトの成果として、
・分散環境下における安全な診療情報収集機能
・抽出データのプライバシーリスク評価機能
・同意情報の電子化と情報連携機能
・二次利用監査に対するトレーサビリティ機能
などの機能開発を行ったが、現在これらの機能を応用した研究における二次利用を目的とした安全な診療情報利活用基盤の開発を行っている。

本発表では、国立がん研究センター中央病院で実施中のいくつかのプロジェクトや次世代医療基盤法の認定事業者システムなどを例にあげ、上述の成果を応用したセキュリティ要素技術の活用場面と機能詳細、今後の展望について報告する。