Japan Association for Medical Informatics

[2-D-3-02] 患者からのアクセスに考慮した診療圏の可視化と医療需要推計

*Koichi Benjamin Ishikawa1 (1. Graduate School of Medicine, International University of Health and Welfare)

近年、我が国ではNDBやDPC調査、病床機能報告などのリアルワールドデータ(RWD)の収集が進み、その集計結果等がオープンデータとして公開されるようになってきた。その結果として、我が国における医療提供の状況に関する理解は飛躍的に進歩してきている。また、それらのデータと地域人口の推計結果を組み合わせることで、診療行為の回数や薬剤使用量、疾患別の患者数など医療需要の詳細な予測が可能となっている。ただし、一般に利用可能な医療需要推計は行政界を単位でとして計算されたものが多く、医療機関における中長期的な戦略の検討に直接的に資するような個別施設の診療圏を想定した医療需要推計についてはあまり普及していないのが現状である。
また、医療機関の診療圏については、現実の受療データに基づく設定方法と、施設の位置や機能および患者から見たアクセシビリティなどの仮定に従って計算する理論的な設定方法の2つのアプローチがある。ただし、前者は個人の受療データを必要とするため、地域での検討には大きな困難が伴う。全国を通じて統一された方法に基づいてデータを整備し、地域医療構想調整会議等で利用するには後者の方法が現実的な選択となる。
本発表では、運転時間に基づいて患者からのアクセスに考慮した診療圏を可視化する方法とその基礎的な結果を示すとともに、ハフモデルを利用した近隣医療施設との棲み分けに関する診療圏のシミュレーションや、全国の受療動向に従った医療需要の推計、将来人口推計を活用した医療需要の変化の見通しについて解説する。