一般社団法人 日本医療情報学会

[2-D-3-03] SCRによる医療提供状況の可視化

*藤森 研司1 (1. 東北大学 医学系研究科 医療管理学分野)

人口構造の劇的な変化で医療の持続可能性が問われている。高齢者は2040年まで増加するが、労働生産人口はすでに減少を始め、社会保障費の増大を賄うための財源確保も難しくなってきている。医療においては地域医療構想をはじめとし、医療提供を持続可能なものとするための改革が徐々に進みつつある。
このような環境下で医療機関は今後も同じではあり得ず、地域の医療需要、他院の医療提供にあわせて、変化していかなければならない。その出発点の一つとして自院の属する医療圏において、何が過剰で何が不足しているのかを把握することは重要であろう。演者はNational databaseを用いて各地域の医療提供状況を、性年齢人口補正を行って直接比較できる指標(SCR、standardized claim-data ratio)を開発し、内閣府の【経済・財政と暮らしの指標「見える化」ポータルサイト】で一般公開している。
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/reform/mieruka/index.html
これは多数のExcel表であるが、BIツールで可視化したものを
https://public.tableau.com/app/profile/fujimori#!/
に置いてあるので、併せて使用いただきたい。いずれも無償である。
SCRは全国の性年齢構造における医療提供状況を100として、各地域の性年齢構成人口と性年齢別レセプト出現数を用いて指標化したものである。性年齢人口補正の上で全国平均の医療が行われていれば100、過剰であれば100を上回り、過小であれば100を下回る。年齢構成、人口規模の違いを吸収して直接比較できる指標である。地域は都道府県、二次医療圏、市区町村の単位で、主な医療行為、薬剤、傷病名等について作成している。
自院の方向性を考える上で、属する地域でSCRの高いものはすでに過剰であり、目指すべきではないだろ。一方で、SCRが低いものは地域で不足しているものであり、目指すべきものである。当然ながら経営判断の上でだが、各医療機関が協力して地域での過不足を解消し、地域全体で医療の完結を目指す時代である。講演ではSCRの原理、制約、活用法等について解説する。