一般社団法人 日本医療情報学会

[2-F-1-02] 口腔保健における自己管理データ活用を高めるための課題と可能性

*宮沢 春菜1、小林 二朗2、吉田 昌弘3 (1. 新潟大学医歯学総合病院 臨床研究推進センター、2. 株式会社BSNアイネット ヘルスケアビジネス事業部、3. 株式会社BSNアイネット イノベーション推進室)

oral health, self-management data, health promotion

う蝕や歯周病等の口腔疾患は、乳幼児期から高齢期にかけて生涯にわたり罹患のリスクがともなう。口腔疾患が進行・重症化するにつれ、歯を喪失するリスクが上昇し、口腔の不快感や食べづらさといったQOLの低下を招く。将来的には更なる歯の喪失、清掃しづらい口腔環境、口腔機能の低下、低栄養状態の悪化へと次第に全身へ影響する問題へと発展する。このステップは一般的にも想像に容易いが、口腔疾患に対する治療が概ね確立し、口腔保健・予防の重要性が叫ばれる現代において、1年間における歯科検診受診は全体で52.9%(平成28年国民健康・栄養調査)にとどまっている。より積極的な歯科受診を促すため、口腔保健領域について国民からより深い興味を持ってもらうような環境づくりが求められている。 近年、口腔疾患と全身疾患との関連や、オーラルフレイルの概念が広く提唱されてきている。感染源にならず口腔機能を保つことができる良好な歯を多く残すことは、超高齢社会の中、健康寿命延伸を目指す上でも大きな目標である。歯科受診時の口腔内状況は生活習慣の多くを反映する一方で、日常的かつ継続的に口腔の自己管理状況を把握できる客観的指標やツールはまだ数少ない。また全身疾患を有する患者さんに対し、検査データや服薬状況が歯科治療方針自体に影響する際は、血圧手帳、糖尿病手帳、お薬手帳などの確認や医科への対診が必要となる状況も多いため、全身状態の自己管理状況の把握・医科歯科連携の点からも、患者データ利活用の必要性を感じる機会は増えてきている。
日常的かつ継続的なデータ収集や連携、情報提供は、歯科従事者にとっては口腔保健指導や治療方針立案の参考、運動・栄養・休養等や口腔保健分野との関連に着目したエビデンス構築のため、また個人にとっては症状・不調の早期自覚や早期受診の促し、各ライフステージに合わせた包括的な予防のためなど応用が期待される。