一般社団法人 日本医療情報学会

[2-F-3] 新世代RFIDと従来型情報メディアの共生による臨床現場の安全改革

*保坂 良資1、奥田 厚子2、海野 泰3、竹内 伸太郎4、脇坂 仁5、瀬戸 僚馬6 (1. 湘南工科大学、2. 医療法人渓仁会 手稲渓仁会病院、3. 独立行政法人 東京都健康長寿医療センター、4. 国立病院機構 北海道医療センター、5. 防衛医科大学校、6. 東京医療保健大学)

UHF band RFID, bar-code, hybrid use

臨床現場の安全管理は個体認証が要であり、高性能の認証情報メディアが不可欠である。バ-コ-ドも一般化したが、2004年には秋田大学病院で患者などすべての個体認証にHF帯RFIDが応用され、翌月からインシデントが半減した。現在では、新世代のUHF帯RFIDが国際標準である。オランダ国鉄ではすべての1回乗車券にRFIDタグを組み込み、短区間でも運賃と別に1ユ-ロを徴収している。我が国ではUNIQLOなどのRFID商品タグが、精算時の高い利便性で知られている。
UHF帯RFIDは原理的に安全に運用できる。これはJIS C61000や諸研究から明らかであり、臨床現場の個体認証に適する。リストバンドによる患者認証、患者や医療職者の院内定位と離院検知、ME機器の院内所在管理、手術器械の一括管理などは、すべてUHF帯RFIDで実現できる。このRFIDは、主要チップの世代更新が予定されており更なる性能向上が期待できる。
しかしRFID化を妨げる動きもある。ある者はRFIDによる手術器械認証を例示し、「すべての接着剤と粘着剤はオ-トクレ-ヴなどの高温・高圧下で毒性ガスを発する」と警鐘を発している。これは、接着剤固定RFIDによる手術器械認証を排除するものである。ところが滅菌現場では、滅菌確認のためインジケ-タテ-プなる粘着テ-プが常用されている。論理矛盾である。不適切な誘導により、護られるべき命が失われてはならない。
RFIDなどのワイヤレス情報メディアは、バ-コ-ドと共生できる。コストが優先される場合には後者が有利なこともある。一方ワイヤレスでもwifi、bluetooth、アクティブRFIDは電源が必要だが、それさえ用意されればバッテリレスのパッシブRFIDと共生できる。患者安全を第一義に考えるのであれば、いずれかの技術や特定の利害関係に依存せず、巨視的な議論がなされるべきと考える。