Japan Association for Medical Informatics

[2-H-1-04] 歯科診療室の個室における実データを用いた汚染空気の滞留シミュレーション

*Eriko Nambu1, Kazunori Nozaki1, Motohiko Fukuoka2, Ryotaro Yokono2, Michiko Kaihotsu2, Kokomoto Kazuma1, Shigehisa Akiyama1, Shumei Murakami1, Hiroshi Hanamoto1, Jyunpei Murakami1, Shota Nakamura3, Takashi Sakamoto1, Shinichi Sekine4, Tomomi Yamada1, Mikako Hayashi1 (1. 大阪大学歯学部附属病院, 2. ダイキン工業株式会社テクノロジーイノベーションセンター, 3. 大阪大学微生物病研究所, 4. 大手前短期大学歯科衛生学科)

Computational Fluid Dynamics, ICT, Air quality

背景:歯科治療の臨床現場では、歯科医師はウイルスや細菌を含むエアロゾルに直接曝され、歯科医師以外の医療従事者や患者は徐々に進行する空気汚染の影響を受ける。大阪大学歯学部附属病院ではダイキン工業株式会社との共同研究により、医療従事者と患者双方の健康状態の改善とウェルネスの実現を目的としたプロジェクトを推進している。本研究では、歯科診療空間における空気滞留の要因を空気質改善の観点から明らかにすることを目的として、数値流体力学(CFD)を用いた気流シミュレーションを実施した。
方法:歯科治療用チェアを一台配置し、ドアと窓を設置した歯科診療室を元に、CADソフトウェア(Fusion360 2.0.13162)を用いて、ドアと窓の開閉条件によって異なる三次元形状を作成した。境界条件として、それぞれ開放した箇所に空気の流入・流出条件を設定し、CFDソフトウェア(STAR-CCM+ 2021.2)によりシミュレーションを実施し、空気質の評価指標の一つである空気齢(流入口からある地点に流れが到達するまでに要する時間)を用いて評価した。
結果:CFDにより算出した空気の流路と空気齢を可視化した結果、流路に沿って空気齢が低くなる傾向が見られたが、それ以外の場所では空気齢の値が高くなった。特に流路を遮る設備や人体付近に空気が滞留しやすいことがわかった。
考察:本研究では、歯科診療室内の空気の滞留しやすい箇所をCFDによる空気齢の可視化により明らかにすることができた。今後の課題として、IoTセンサーによる空気環境の経時的観測データや生化学検査の結果などと組み合わせて粒子シミュレーションを実施し、適切な汚染空気排除の検討等を行う。これらの臨床実験やシミュレーションから得られたデータを蓄積することにより、プロジェクトとして歯科診療における新たな衛生基準の提案に繋げる。