[2-H-3-05] 電子化クリニカルパスによるインシデント予防効果の評価
Clinical Pathway System, Medical Safety, Incident report, Electronic Clinical Pathway System, Hospital Information system
【背景】クリニカルパス(以下 パス)は、医療安全、医療の質向上に有効である。電子化が進み、さらなる医療安全効果が期待されるが、報告は乏しい。長崎大学病院では、2009年に電子化パスを導入し、全入院の45%が入院から退院までのフルパスを適用している。 【目的】電子化パスによるインシデント予防効果を評価する。 【方法】2018年度より2020年度の長崎大学病院に入院した57,549名に対し、インシデントレポート管理システムと電子カルテを利用し、パスの有無に対するインシデントレポート件数と、その程度を示す影響度レベル3a以上のレポート件数を年度別に比較した。さらに入院日数20日以内の入院に絞り、同様に分析した。 【結果】インシデントレポート件数は、パス有が24,986件中2,119 件(8.5%)、パス無が32,563件中7,452件(22.9%)で、年度別でも同様の発生率だった。影響度レベル3a以上のレポート件数は、パス有が397件(1.6%)、パス無が1,557件(4.8%)とパス無はパス有の3倍の発生率を示した。 入院日数20日以内の入院では、パス有が23,026件中1,247件(5.4%)、パス無が24,791件中2,607件(10.5%)で、年度別でも同様の発生率だった。影響度レベル3a以上のレポート件数は、パス有が186件(0.8%)、パス無が420件(1.7%)といずれもパス無に対しパス有の発生率は低かった。 【考察】全患者の分析では、パス無でパス有の約2倍のインシデント発生率であり、影響度3a以上では約3倍の発生率だった。ただし、パス無は有に比べ平均入院日数が長く、日数によるインシデント発生しやすさが生まれるため、入院日数20日以下で比較したが、これでもパス有のインシデント発生率、影響度3a以上の発生率ともにパス無より低かった。 【結論】パス利用はインシデント予防に有効である。