Japan Association for Medical Informatics

[2-H-3-06] 転倒転落防止における情報システム活用の現状と今後の課題

*Takeru Abe1, Yumi Nagano1, Hideki Katsumata1, Tatsuya Kikuchi1, Hitoshi Sato1, Kyota Nakamura1 (1. 横浜市立大学附属市民総合医療センター医療の質・安全管理部)

Fall, Prevention, Integrated approach

背景と目的:転倒転落予防は、急性期病院入院患者における医療安全上の重要な課題である。当院における情報システムを活用した既報では、従来のリスクアセスメントスコアおよびインシデント報告を用いて関連要因を特定したが、いずれも中程度の予測精度を確認するに留まっていた。そこで本研究では、①第一に、機械学習アルゴリズムの導入による予測精度向上を目的とした。②第二に、転倒転落予防に係るスコーピングレビューにより、知見の整理および課題抽出を目的とした。 方法:①対象は、2020年3月1日~2021年2月28日(1年間)に入院した全患者(34,705例)とした。まず、イベント発生期間中央値を求めた。次に、28項目からなるリスクアセスメントスコアを用いて、既報で特定した予測モデルの精度を機械学習アルゴリズムにより検証した。②PubMedおよび医中誌を用いて2022年5月末までを対象とし、転倒転落・予防(fall and prevention)をキーワードとしたスコーピングレビューにより、予防・予測の現状と今後の課題を抽出した。 結果:①イベント発生期間中央値は10日(四分位範囲:4-33日)であった。Random Forrestモデルが最も高精度であった。有意な要因として、既往歴、ふらつき、筋力低下、夜間排泄、判断力、車椅子、睡眠導入剤の7項目が抽出された。②既存の評価法による予測精度は中程度、画像認識、センサーによる予防が示唆されていたが、予防改善の報告および経時的データ解析モデルの報告がない。 考察:本研究では、情報システムから抽出したデータに機械学習アルゴリズムを適用することで、転倒転落予測精度向上の可能性を示した。一方、精度改善に限界があり、データ入力負担を低減するに至っていない。経時的データの特性を加味した新たなアプローチが必要である。