Japan Association for Medical Informatics

[2-I-2-07] 複数病院のDPCデータを用いた安全なデータ共有とリアルタイム経営指標分析の秘密計算技術による実現

*Takeharu Kondo1, Mitsuaki Makino1, Ryosuke Takahashi1, Kikue Sato2, Shintaro Oyama2 (1. 株式会社Acompany, 2. 名古屋大学医学部附属病院 メディカルITセンター)

Secure Computing, DPC, Privacy preserving data analysis

背景
DPCデータを用いて、複数病院の経営指標を比較分析することは一般に行われている。
しかし、自院のデータを基に複数の病院間の経営指標分析から実際の病院経営に活かすには更に高頻度な集積と分析実施が必要である。
ところが、各病院の保有するDPCデータを高頻度に集積し分析を実施すると、経営状況が外部に対して明らかになってしまうリスクや、集積した情報の漏洩リスクが大きくなる課題がある。
そこで、データの内容を秘匿したままデータ分析が実施できる技術である秘密計算技術を利用して、上記の課題解決を実施した。

方法
本研究で用いる秘密計算技術には、Secure Multi-party Computation(SMPC)と呼ばれる方式を採用した。SMPCはデータを無意味な複数の断片に分割し、それぞれの断片を複数のサーバに分散して送信し、データを秘匿化した状態のまま任意の計算が実行できる。
上記を用いて、DPCデータに対して経営指標分析を実施することで、データを外部に公開することなく、かつデータの漏洩リスクを低減することができる。
本研究では、名古屋大学病院の保有する2019年度の1年間のDPCデータと、2つの仮想病院のDPCデータを生成して、合計3つの病院の1年間分のDPCデータを使用して経営指標分析を実施した。
経営指標分析については、診療科毎の患者数・売上・費用・粗利率のそれぞれについて総和・平均・偏差を算出した。

結果
合計150万行のDPCデータに対して、総和・平均・偏差の計算を実行し、その総計算時間は約20分であった。また、計算誤差は最大でも100万分の1程度であった。

結論
秘密計算技術を用いることで、複数病院のDPCデータの安全なデータ共有とリアルタイム経営指標分析ができることがわかった。
今後は実際の病院経営のDPC分析フローの仕組み作りに着手することが望まれる。