一般社団法人 日本医療情報学会

[2-P-2-04] 保険薬局におけるICT化ならびに医療情報ネットワーク参加への促進/阻害要因の探索

*櫻井 秀彦1、古田 精一1、谷川 琢海1、岸本 桂子2、丹野 忠晋3、伊藤 敦4、平井 里奈4、奥村 貴史5 (1.北海道科学大学、2.昭和大学、3.拓殖大学、4.京都府立大学、5.北見工業大学)

Community Pharmacy, Information and Communication Technology, Regional Healthcare Information Network, Facilitator, Inhibitor

【目的】2021年度の医薬分業率は75.1%と近年高止まりを見せており、量的拡大以上に、かかりつけ薬剤師・薬局機能や健康サポート機能などの質的向上が課題となっている。そのためには、ITC化や医療情報ネットワーク(以下NW)への参加・活用が課題となる。しかし、その実践事例はごく一部の地域に限られている。また、これらの促進/阻害要因に関する検討は十分ではない。そこで、本研究では保険薬局を対象に、ICT化やNW化の促進/阻害要因に関する調査研究を行った。
【方法】2021年2月にA市の協力を得て、市内の保険薬局1,605店に調査を行った。調査では、薬局属性の他、各業務負担感と導入への支払意思額などを測定した。分析は、属性やNW参加の有無による比較検定の他、業務負担感や支払意思額に影響する要因を検討するための重回帰分析やNW参加の要因を検討するためのロジスティック回帰分析を行った。
【結果】159店から回答を得た(回答率9.9%)。比較検定では、20店舗以上のチェーン薬局が電子薬歴の導入が有意に進んでいたほかは、他医療機関・施設との情報授受業務や在宅患者数などに有意差は見られなかった。ネットワーク参加薬局では、トレーシングレポート(以下TR)の授受医療機関数が有意に多かった。業務負担感への影響では、情報授受の密度の高い医療機関数やTR数が有意に影響していた。また、ICT・NW化への支払意思額にはグループ薬局数と在宅患者数が影響し、業務負担感は影響していなかった。更にNW参加にはやはり在宅患者数とTR数が有意に影響していた。
【結語】保険薬局のICT・NW化には在宅患者数や情報授受医療機関数などが影響することが明らかとなった。また、促進/阻害要因には地域包括ケアシステムでの主体的役割を担うこととの関連が示され、阻害要因を解消することにより、医薬分業の質的向上にも結び付く可能性が示唆された。