[3-A-1-02] 臨中ネットの将来像とそれへの期待
Randomized Clinical Trial (RCT)は1950年頃から導入され、その後、薬剤等の有効性、安全性を判断するための標準的評価法となった。しかし、RCTは条件を満たした患者のみを対象にした試験であり、その後、承認され広範に使用される場合、RCTとは異なる条件で使用されることが一般的である。このような実臨床(real-world)での評価を行うことが1960年代頃より実施され、real-world study(RW研究)と呼ばれていた。しかし、当時は紙カルテの時代であり、その実施は容易ではなかった。近年、電子カルテ等の発達により、real-world data(RWD)の収集が容易となり、新たな形でのRW研究が進められている。さらに、米国FDAがRWDを市販後の安全性評価や臨床試験の比較データとして利用可能なことを示し、RW研究がさらに重要となっている。一方、わが国では、PMDAによるMID-NETや国立病院機構によるNCDAが形成され、一部、利用されてはいるが、それぞれ限界もある。臨床研究中核病院で形成される臨中ネットでは、それぞれの病院の医療情報部門が関わり、提供されるデータの質や標準性が担保されていることが重要である。また、各病院が独立してRWDを持ちながら、あたかも1つのデータベースでのRW研究が実施される体制が構築されている点も特徴である。臨中ネットでのRW研究は国際水準の臨床研究等の中心的役割を担う医療機関でのRW研究であるという重要性とともに、ここで開発された手法が他の医療機関にも拡張され、より広範なRWDに基づくRW研究へと発展させることが期待される。また、異なるRWDに基づくRW研究の結果(real-world evidence、RWE)を集積・比較することで、より信頼性の高いRWEを導き出すことも期待できる。