一般社団法人 日本医療情報学会

[3-A-3-02] ビッグデータ・AIが拓く未来の医学・医療

*平田 健司1,2,3,4 (1. 北海道大学大学院医学研究院画像診断学教室、2. 北海道大学大学院医学研究院医理工学グローバルセンター、3. 北海道大学大学院医療AI教育研究分野、4. 北海道大学病院核医学診療科)

国は医療におけるAI研究開発を進めるべき重点6領域として、(1)ゲノム医療、(2)画像診断支援、(3)診断・治療支援、(4)医薬品開発、(5)介護・認知症、(6)手術支援を定めてきた。これに基づき文部科学省より「保健医療分野におけるAI研究開発加速に向けた人材養成産学協働プロジェクト」が令和2年度に公募された。東北大学(主幹校)、北海道大学、岡山大学の3大学で、「『Global×Localな医療課題解決を目指した最先端AI研究開発』人材育成教育拠点」を申請し採択された(令和6年度までの5年間)。
これまで、3大学および協力校・協力企業が連携し、現場の医療ニーズを満たす医療AI開発を推進できる人材の養成を目指して様々な取り組みを行ってきた。北海道大学においては、4年間の博士課程コースと、ほぼ同じ内容を1年間で集中的に学ぶインテンシブコースとを令和3年4月に開設した。令和3年度は計40名程度の受講者を受け入れたが、令和4年度には100名以上から応募があり、医療AIに対する関心がいかに高いかを知ることができる。
医療AI開発者養成には特有の難しさがある。新しい分野であるため、専属の教員が足りない。複数の医学分野と情報科学が融合した分野であるため、専門の異なる教員によるチーム教育が欠かせない。受講者のバックグラウンドも医療従事者から情報科学者まで多種多様で、それぞれが教育プログラムに期待する内容(分野や深さ)も様々である。このような状況を踏まえて、北海道大学ではまずオンデマンド講義を充実させた。専門の異なる多くの研究者や臨床家に講義を依頼し、最先端の内容をわかりやすい言葉でなるべく簡潔に、忙しい社会人でも空いた時間で学ぶことができることを目指して大学院科目を構築した。ついで、受講者が手を動かして学ぶハンズオンセミナーを充実させ、大学院生は独自の医療AI研究に取り組んでいる。
よく、医療AI開発者にはロールモデルがないと言われる。医療AIを学ぶ学生や大学院生に自分の将来像(大学や企業でのポジションなど)が見えにくいようだ。しかし、逆手に取れば無限の可能性があるとも言える。教員がいかに魅力的な教育を提供できるかが、将来の医療AIに大きな影響を与えると確信し、日々試行錯誤している。