一般社団法人 日本医療情報学会

[3-B-2-01] 臨床研究中核病院に期待されるReal World Evidence創出のための試み

*松木 絵里1,2 (1. 慶應義塾大学病院 臨床研究推進センター、2. 慶應義塾大学医学部 血液内科)

Real World Data, Real World Evidence, Core Hospitals for Clinical Research, Regulatory Decision Making

2016年に米国において21st Century Cures Actが調印されて以来、リアルワールドデータ(Real World Data; RWD)、リアルワールドエビデンス(Real World Evidence; RWE)の活用に注目が集まっている。2018年に米国食品医薬品局(Food and Drug Administration; FDA)が発表した”Framework for FDA’s Real-World Evidence Program”において、RWDは「様々なソースから日常的に収集される、患者の状態や医療の提供に関連するデータ」と定義されており、RWEは研究デザインによらず、「RWDを解析して得られる医薬品・医療機器に関する臨床エビデンス」と定義されている。一方、これらの用語が適切に使用されていない、あるいは相互互換的に用いられることも多く、未だRWD, RWDについての適切な理解が世界的に浸透しているとは言い難い状況にある。実際には典型的な手法で実施されるランダム化比較試験を除き、RWDが様々な程度で臨床試験に組み込まれて用いられる事例は増加傾向にあり、介入研究の結果がRWEとなる事例もあることから、RWDが用いられている範囲や、その特性に合わせた結果の解釈についての理解が重要である。
本邦におけるRWE創出のための試みの一つとして、臨床研究中核病院ではRWDの一つである病院診療情報システムに蓄積されている日常診療データを臨床研究に二次利用するための仕組みづくりに2018年から取り組んでいる。当面の目標は複数のクリニカルクエスチョンに回答できるような臨床研究を円滑に実施できるようにすることであるものの、その先に期待される機能としては、厚生科学審議会 臨床研究部会が2019年に取りまとめた「臨床研究・治験の推進に関する今後の方向性について」に記載されているように、薬事分野での利活用も視野に入れた整備が期待されるところである。本発表ではこれまでの整備状況により、病院診療情報システムからのデータをRWDとしてRWE創出のために二次利用する上で明らかとなってきた課題及び今後の方向性について、概説する。