[3-E-2-01] CKD診療における効果的多職種連携の社会実装化へ向けた課題
CKD, Primary Care Physician, Multidisciplinary Care
慢性腎臓病(CKD)患者の大多数はかかりつけ医で診療が行われている。しかし、腎臓専門医との連携が必ずしも円滑でないことや生活食事指導介入も不十分であり、実臨床の場ではエビデンス実践ギャップが生じている可能性が指摘されてきた。そのような中、厚生労働省は国民の健康を守る政策に関連するエビデンスを生み出すため実施される大型臨床介入研究(戦略研究)の対象疾患として腎臓病を2006年に採択し、研究課題「かかりつけ医/非腎臓専門医と腎臓専門医の協力を促進する慢性腎臓病患者の重症化予防のための診療システムの有用性を検討する研究」を2007年より実施することを決定した。本研究は、Frontier of Renal Outcome Modification in Japan:FROM-Jと名付けられ、日本全国49郡市医師会が参加し、かかりつけ医に通院するCKD患者2379名が登録された。その後、多職種介入システムを導入した介入群と、通常診療群の2群に49の医師会がクラスターランダム化された。介入システムとして、管理栄養士によるクリニックでの生活食事指導、受診中断者への受診勧奨、そして専門医への紹介基準に達した際のアラートシステムを採用した。3.5年間の介入の結果、介入群においては、主要評価項目である診療連携率が有意に高いこと、受診継続率の向上や登録時G3症例でのeGFR低下速度の抑制も示され、またBMI減少や薬剤に頼らない降圧効果といった生活変容の効果が得られていることも示された(Yamagata K et al. PLoS ONE 2016)。さらに10年後の長期予後調査を行った結果、介入群でCKDの重大なリスクである心血管イベント発生が有意に低下していたとともに、登録時G3a症例のeGFR低下速度は10年後でも有意に低いことが示された(Imasawa T et.al. Nephrol Dial Transplant 2022)。現在、かかりつけ医と腎臓専門医の連携を強化すべく全国的に対策が進められているが、FROM-Jのこの研究成果をどのようにして今後社会実装していくかが課題である。