一般社団法人 日本医療情報学会

[3-E-2-03] 治療用アプリの現状と展望

*佐竹 晃太1,2 (1. 日本赤十字社医療センター、2. 株式会社CureApp)

Digital Therapeutics, Lifestyle Modification, cognitive-behavioral therapy

食事・運動療法などの非薬物療法は高血圧や脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病の治療の基本である。しかし、行動変容を促すために必要な患者自身による知識や技術の習得、さらには行動変容の動機付けが困難なこともあり、実際には継続や習慣化ができないことも少なくない。また、多忙な医療従事者からの指導を受けられる時間が限られていることや医療機関間における診療の質にばらつきがあることも、生活指導がうまく結果に繋がらない原因と考えられる。そのため、患者の生活習慣にいかに介入するかは大きな課題であった。

CureApp HTは高血圧診療における外来受診間の「治療空白」において、高血圧症についての教育的な介入やセルフモニタリング、認知や行動に働きかけ、高血圧治療の補助となることを目的として株式会社CureAppが開発した治療用アプリである。治療を目的としてスマートフォンなどの汎用デバイスにインストールされたアプリのうち、その効果を立証し、医療機器として承認されたものは「治療用アプリ」と呼ばれる。CureApp HTの介入効果を検証する第 III 相試験の結果、12週時点における24時間平均収縮期血圧のベースラインからの変化量について、治療用アプリ群は対照群に比較して有意な降圧効果を得たことが報告された。その結果を受け、2022年4月にCureApp HTは薬事承認された。

その他にも、内科でのアルコール依存症治療の実現を目指すアルコール依存症治療用アプリの臨床研究は2021年より岡山市立市民病院で進行中である。そして、がん薬物治療を継続する患者を支援する治療用アプリにおいても、第一三共と共同で、乳がん領域での臨床試験を進めている。今後、更なるエビデンスの構築とともに治療用アプリが益々普及していくことを期待する。