[3-E-3-02] 退院支援の早期介入および身体抑制の代替策検討のための確率モデル式の構築と評価
Nursing care, Discharge Support, Physical Restraint, Dementia
【背景】認知症患者は入院が長期化する傾向にある。また、認知症患者は、患者の生命保護および身体損傷を防ぐ目的で身体抑制が実施される。身体抑制には倫理的な問題があり、ケア提供者の心理的負担も大きい。地域包括ケアを推進する我が国においては、継続的な治療・看護のための退院支援、および医療安全のための身体抑制以外の代替策の検討は、入院早期から実施されるべきである。【目的】入院時点で取得可能な認知機能低下を識別する情報およびその他の患者属性情報を用いて、退院支援および身体抑制が必要となる患者を検出する確率モデル式を構築する。【方法】目的変数は退院支援カンファレンスの実施と身体抑制の実施とする。説明変数として、認知機能低下を識別する情報は認知症の診断名、認知症治療薬、看護師による認知機能のアセスメント情報を設定する。その他の患者属性情報は、自由度や輸送区分、疾患分類、手術の有無等を設定する。ロジスティック回帰分析により、各説明変数の影響度を確認した後、確率モデル式を構築し、妥当性評価を行う。【結果】ロジスティック回帰分析の結果、退院支援では自由度や輸送区分が、身体抑制では手術の有無や輸送区分が強く影響していた。いずれの目的変数においても、認知機能低下を識別する情報のうち、看護師のアセスメント情報が強く影響していた。確率モデル式の妥当性評価のために、5-fold cross-validationを用いて、偽識別率と陽性的中率、陰性的中率、感度、特異度を算出した。それぞれのスコアは、退院支援で、0.266、0.721、0.749、0.764、0.704であり、身体抑制で、0.198、0.795、0.810、0.815、0.790であった。【考察】入院時点で得られる情報を確立モデル式に組み込むことは、退院支援および身体抑制が必要となる患者の予測に有用であることが示唆された。