一般社団法人 日本医療情報学会

[3-E-3-03] MID-NETを用いた甲状腺機能低下症の検索精度に関する検討

*井上 隆輔1 (1. 東北大学病院メディカルITセンター)

Phenotyping, MID-NET, hypothyroidism

目的:医療情報データベースであるMID-NETを用いて、疫学研究の実施に適切な対象者の抽出が可能となるよう抽出条件を設定する。
方法:甲状腺機能低下症を対象とし、初期条件では2020/12/14~2021/3/31に甲状腺機能低下症に関連する病名(レセプト、DPCを含む)の開始日があり、甲状腺機能低下症に対する薬物治療を行っている患者とした。該当者は診療録を確認し、真のケース、疑わしいケース、その他のケースに判定し、陽性的中度(PPV)を算出した。更に、機械学習によりPPVに影響する要因を検討し、PPV改善を目的に改良型アウトカムを作成した。本研究は本学医学系研究科倫理委員会により承認されている。
結果:初期条件により抽出された194例を調査した。真のケース56例、疑わしいケース30例、その他のケース108例であった。PPVは28.9%、疑わしいケースを真のケースとして扱うと44.3%であった。 その他のケースとなった例は、甲状腺機能低下症治療中であるが、治療により検査値が安定している例が81例と、大半を占めた。また、検査が行われていない例も24例存在した。 機械学習では、遊離サイロキシン(FT4)低値がきわめて強く関連した。他の項目は、遊離トリヨードサイロニン(FT3)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)を含めた検査値異常、薬剤等も目立った関連を示さなかった。 以上を踏まえ、「甲状腺機能低下症の病名開始日前後30日以内に甲状腺機能低下症治療薬の処方があり、かつFT4の結果値が正常下限未満である」という改良型アウトカムを設定した。これによりいずれも真のケースである44例が抽出され、PPVは100%となった。感度も80%以上を維持した。
結論:初期条件ではPPVが低かったが、機械学習の結果を踏まえた改良型アウトカムにより、PPVが大きく改善した。