Japan Association for Medical Informatics

[3-E-3-04] 治療効果を基にした患者層別化AI技術の基礎検証

*Yasuaki Nakamura1, Wataru Takeuchi1, Hideyuki Ban1 (1. 株式会社日立製作所 研究開発グループ)

Machine Learning, Patient Stratification, Treatment Effect

近年,がん領域において,精密医療の進展に伴い高額な治療法の普及が速い反面,患者QoLが最大となる最適治療法の選定や治療計画の策定が複雑化した現状に直面している。そのため,患者個人の特性に合った最適治療選択の追及に焦点が当てられてきており,診療歴やゲノム情報などの高次元な実世界データを活用し,より効率的かつ最適な治療を実現させるためのAI技術に注目が集まっている。 典型的な技術として,患者特性に応じた推定治療効果にて層別化し,各層ごとに最適治療法を策定するアプローチが近年注目されており,因果推論と機械学習を掛け合わせた高度な治療効果推定方法が提案され始めている。特に,その一つである決定木を用いた手法では,木構造を用いて患者特性に応じた治療効果を推定するため,それぞれ異なる治療効果がある患者群を直接的に層別化して抽出することができる利点を有する。しかし,この先行研究では,患者特性をすべて同等に扱って学習するためロバスト性が低く,推定治療効果のバラつきが大きいという課題があった。 本報告では,患者QoLと医療費抑制の両立をめざしたがん治療の最適な選択を支援する技術の開発を目的に,治療効果による層別化を特長とする治療効果分析技術を提案する。提案手法は,従来法である決定木ベースの治療効果推定手法の課題である治療効果推定精度およびロバスト性を向上させるために,治療効果に関連する患者特性に対して事前学習した重みを付けて学習する特長を有する。数値シミュレーションを用いた検証の結果,治療効果推定精度およびロバスト性が向上したことを確認した。また,がん公開データベース等を用いた検証の結果,母集団から治療奏功群の抽出が可能であることを確認したので報告する。