[3-E-3-05] 回帰型ニューラルネットワークモデルを用いたHCV関連慢性肝炎患者の肝細胞癌発症の予測
Hepatocellular carcinoma, Prediction of disease onset, Recurrent neural network
【背景・目的】 肝細胞癌(HCC)の約50%はC型肝炎ウイルス(HCV)による慢性肝炎や肝硬変由来である。多くのC型慢性肝炎患者で抗ウイルス剤によりウイルス学的著効に至るが、肝線維化が進行した状態では肝細胞癌のリスクが残り、早期発見を目的とした定期的なスクリーニングが行われている。そこでC型慢性肝炎患者の肝細胞癌の早期発見を目的に、血液検査データを用いた種々の回帰型ニューラルネットワークによる肝細胞癌発症予測モデルの作成を行い、縦断的な精度の検討を行った。 【対象・方法】 当院の肝臓内科外来に1994年から2018年の間に2年間にわたり通院したC型慢性肝炎患者424名(HCC患者95症例、HCC未発症者329症例)の検査データ等(年齢、AST、γ-GTP、AFPなど19項目)を入力データとした。学習に使用する時系列の長さを6~24ヶ月で変化させ、診断日の18ヶ月前~0ヶ月の時点(予測時点)で診断日におけるHCCの発症の有無を予測するようにRNN、LSTM、およびGRUによるモデルを学習させた。なお、予測時点から診断日までの期間を予測期間と呼ぶことにする。予測精度は5分割交差検証によって評価した。 【結果】 いずれのモデルにおいても予測時点が18ヶ月前ではROC曲線下面積(AUC)は0.72~0.74、0ヶ月では0.82~0.83であり、予測期間が短くなるにしたがってAUCが大きくなる傾向が確認された。本検討ではいずれの予測期間においても各回帰型ニューラルネットワークのAUCに優位な差は見られなかった。 【考察・結語】 本検討で用いたいずれの回帰型ニューラルネットワークでも適切に学習でき、かつ、想定される癌の進展とともに予測期間が短くなるにしたがって判別能力が向上していることから、本手法によってHCCの発症予測が可能であり、早期発見に寄与できる可能性があることが示唆された。