[3-E-3-06] 電子カルテ情報から「腎代替療法を受けている患者」を同定するアルゴリズムの開発: リアルワールドエビデンスを創出する臨床研究中核病院ネットワークの取り組み
Kidney replacement therapy, Validation study, Phenotyping, Chronic kidney disease
【背景】腎代替療法は慢性腎臓病患者にとって最も重要なアウトカムであるが、電子カルテからは直接的に腎代替療法の実施を同定することは困難であった。患者プロフィールや透析部門システム等の情報は標準化されておらず、データベース研究に活用されにくい状況にあった。そこで我々は、傷病名、診療科、処方、検査所見等の情報を組み合わせて腎代替療法を受けている患者を同定するアルゴリズムを作成することを目的とした研究を行った。【方法】第1段階として、名古屋大学医学部附属病院を2018年4月から2年間で3回以上血清クレアチニンの採血を施行された患者7,435名分のデータの診療情報より、医師が記載したテキスト情報をから「末期腎不全」「透析」「移植」「RRT」「HD」「CAPD」「dialysis」を含む記載に限定し、2名の腎臓内科による電子カルテの直接閲覧に基づいて腎代替療法を受けている患者を同定した。これを正解データとして、アルゴリズムの開発を行った。病名、検査値、処方内容を組み合わせたアルゴリズムを作成するため、単独で腎代替療法を分類する因子を探索した。次にそれらを組み合わせて「実施中の腎代替療法」と「腎代替療法の開始」の分類感度と特異度を調査した。【結果】7,435名のうち245名が腎代替療法を実施していた。アルゴリズムにより277名が腎代替療法実施中と分類された。分類性能はeGFRの値が低下するにつれ低下した。陽性的中率は65%であったが、eGFR<15 ml/min/1.73 m2に限ると72%であった。【考察】電子カルテ情報の処方、傷病名、臨床検査値を用いて腎代替療法を検出するアルゴリズムを初めて開発した。今後のリアルワールドデータ利活用に向けてこのようなバリデーション研究の重要性はますます高まることが予想される。今後はさらに施設を拡大して一般化可能性を高める方針である。