一般社団法人 日本医療情報学会

[3-E-3-07] 機械学習を用いた糖尿病患者の腎機能のRapid Decline発生予測

*中原 英里1,2、田中 健太郎1,2、倉沢 央2、藤野 昭典2、関 倫久1、脇 嘉代1、大江 和彦1 (1. 東京大学医学部附属病院, 2. 日本電信電話株式会社)

Machine learning, Electronic Health Record, Prediction model

【背景】糖尿病患者において急激な腎機能低下(RD, Rapid Decline)を起こす症例が知られており、このような患者群では腎機能維持のために早期から治療の最適化に取り組む必要性が指摘されている。 【⽬的】医師がRDに至る可能性が高い糖尿病患者群を早期に同定し、治療の最適化を実現できるよう、過去約1年間の検査値の情報から将来1年の間にRDに至る可能性を予測するモデルを開発する。 【⽅法】 本研究では2018年1月から2020年1月の期間に東京大学医学部附属病院に通院し、糖尿病の確定病名が付与された患者2003名のうち、新⽣物,肝炎,腎疾患(CKDを除く)のいずれかに罹患した患者(22名)及びeGFR<30 mL/min/1.73 m2の期間(患者平均10日)を解析対象から除いた1981名を対象とした。将来1年間のeGFR値が60 mL/min/1.73 m2未満かつ将来2年間の線形⼀次回帰の傾きが>-5 mL/min/1.73 m 2/yearを初めて満たした時点をRDと定義し、389名が該当した。機械学習手法の一つであるLightGBMを用いてモデルを構築した。電⼦カルテから抽出した 52週分の166項目の検査値の情報を⼊⼒とし、将来1年にRDが発⽣するかどうかを予測するモデルを層化5分割交差検証を用いて評価した。各施行において56%(1109名)を学習データ、24%(475名)を検証データ、20%(397名)をテストデータとして割り当て、予測精度の5施行の平均と分散を算出した。 【結果】将来1年間のRD発症の予測に対して、正解率は平均83 %(SD 1.8 %)、ROC-AUCは平均0.828(SD 0.016)、PR-AUC は平均0.544(SD 0.043)であった。 【考察】腎機能維持に向けた治療最適化の重要性が高い糖尿病患者群の絞り込みにおいて、本モデルの有⽤性が⽰唆された。