一般社団法人 日本医療情報学会

[3-F-1-04] グラフ構造に基づく画像診断機器に関する共同利用の評価:レセプトデータを用いたネットワーク分析

*石川 智基1,2、佐藤 淳平3、合田 和生3、森井 康博4,2、小笠原 克彦2、喜連川 優3、満武 巨裕1 (1. 一般財団法人 医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構, 2. 北海道大学大学院 保健科学研究院, 3. 東京大学 生産技術研究所, 4. 国立保健医療科学院 保健医療経済評価研究センター)

Receipt data, Health Services Resarch, Network analysis, Service Sharing

[背景・目的] 近年、高額医療機器の配置適正化のために、都道府県は機器共同利用計画を議論することが求められている。この議論において、共同利用における医療機関連携を捉えた資料が有効であるが、現在利用可能な情報の多くは医療機関別の独立した集計値に留まっている。本研究では、機器共同利用を議論する資料提供を目指し、レセプトデータのネットワーク分析を試み、新たな分析手法として提案することを目的とする。 [方法] 一県から収集した後期高齢者医療・国保分の医科外来レセプトデータの内、2016年から2019年度に実施されたCT検査を対象に共同利用を実施した患者を抽出した。抽出条件は(1). 連続する3ヶ月の内ある医療機関で検査を伴う受診が1度だけ有る、(2). 連続する6ヶ月に(1)と別の医療機関の受診が複数回有る、(3). (1)の受診が(2)の受診期間内に有る、を各々同時に満たす場合を条件として設定し、医療機関をノードとした有向グラフデータを作成した。これを基にグラフ構造の中から評価指標である密度、相互性を共同利用関係の評価指標として年別に算出した。 [結果・考察]  共同利用件数は2016年度から2019年度で各々870件、862件、892件、846件であった。同様に、密度は3.29×10-3,3.20×10-3, 3.52×10-3, 3.14×10-3、相互性は9.74×10-02、9.80×10-02、8.78×10-02、7.79×10-02と共に長期で減少傾向を示した。密度と相互性の減少は、共同利用を行う医療機関の組合せ数と双方向性の減少を示しており、共同利用関係が集中傾向にあると解釈できる。本手法により、実際の履歴に基づき、共同利用関係をグラフ構造として捉えることが可能であった。また、評価指標の算出により、定量的情報に基づく共同利用政策に関する議論への貢献が期待できる。