Japan Association for Medical Informatics

[3-F-1-05] 小児髄芽腫陽子線治療における複数の晩期有害事象を考慮した費用対効果分析モデルの検討

*Ryuki Kita1, Yasuhiro Morii2,3, Takaaki Yoshimura3, Katsuhiko Ogasawara3 (1. 北海道大学大学院保健科学院, 2. 国立保健医療科学院 保健医療経済評価研究センター, 3. 北海道大学大学院保健科学研究院)

cost-effectiveness, medulloblastoma, proton therapy

【背景と目的】小児髄芽腫に対する集学的治療において放射線治療は標準治療の一環として行われる。陽子線治療は従来のX線治療と比較して有害事象を低減できる。一方、陽子線治療の費用は保険診療ではあるものの高額であるため費用対効果分析を行うことが望まれる。小児髄芽腫に対する陽子線治療の費用対効果分析では難聴や二次がんを対象とした報告はされているが、その他の有害事象を含めた報告はされていない。本研究では様々な有害事象を含めた費用対効果分析を行うことで、X線治療と比較した小児髄芽腫に対する陽子線治療の有害事象低減に対する費用対効果を明らかにする。 【方法】マルコフモデルを用いて小児髄芽腫患者100人の集団を対象に費用対効果分析を行った。追跡期間は30年として、モデル上の健康状態には合併症の無い健康状態と死亡の他、5つの有害事象である成長ホルモン欠乏症、甲状腺機能低下症、難聴、ゴナドトロピン欠乏症、二次がんの5つの有害事象を含めた。公的医療の立場で分析を行った。費用は令和2年度の診療報酬より出来高で計算した。費用対効果の評価指標として質調整生存年をアウトカムとした増分費用効果比を用いた。質調整生存年の設定にはEQ-5Dを用いてQOLの値を推定していた先行研究より取得した。また、系統的な文献調査を行いその結果に基づきモデルと作成モデル内のパラメータの値の仮定について検討をした。 【結果・考察】X線治療の代わりに陽子線治療を行うことによる100人当たりの有害事象に伴う増分費用は-610万円、増分QALYは140.2であった。このことから、X線治療の代わりに陽子線治療を行うことで100人当たり610万円の費用が減少し、140.2QALYを得ることが出来る事が示された。またモデルについて、対象とする有害事象を増やすことなどでより妥当性のあるものになると考えられ、さらに改善を行う必要がある。