[3-F-1-07] 急性期脳梗塞患者の搬送方法が治療へのアクセシビリティに及ぼす影響 ―地理情報システムを用いたシミュレーション―
geographical accessibility , ischemic stroke, endovascular thrombectomy
【背景】急性期脳梗塞の標準治療である経皮的脳血栓回収療法(血管内治療)やアルテプラーゼ静注療法(t-PA)提供の地域差改善のために、様々な患者搬送方法が考案されている。本研究では、搬送方法がこれらの治療への地理的アクセシビリティに及ぼす影響を医療圏別に明らかにすることを目的として、地理情報システム(GIS)を用いて搬送方法別に治療への地理的アクセシビリティに関する分析を行った。 【方法】対象は北海道の21医療圏とした。搬送方法として①患者地点から血管内治療専門医(専門医)在籍施設(Hub施設)へ搬送するmothership法、②t-PAが施行可能な施設へ患者を搬送し治療した後、血管内治療のためHub施設へ搬送するdrip and ship法(通常は①、②やその一部)、③Hub施設から、血管内治療の設備を有する施設(spoke施設)へ専門医が出張して血管内治療を行うdrive and retrieve法、および、④t-PA施行後にspoke施設へ患者を搬送、かつ専門医が出張へ出張し血管内治療を行うもの(②+③)の4つを設定した。GIS上に発生させた仮想患者の搬送時間、および標準的な治療時間等の総和が、2つの治療制約時間以内となる患者の割合(それぞれ血管内治療カバー率、t-PAカバー率)を地域別、シナリオ間に算出して比較を行った。 【結果】ほとんどの医療圏では、搬送方法によってカバー率はほとんど変わらなかった。搬送方法がカバー率に大きな影響を与えるのは宗谷、留萌医療圏であり、それぞれシナリオ③、④、およびシナリオ③により血管内治療およびt-PAカバー率が大きく増加した。 【結論】本研究により、患者搬送方法が血管内治療やt-PAへの地理的アクセシビリティに及ぼす影響が医療圏別に明らかになった。今後は、費用対効果の観点からも最適な脳梗塞患者の搬送方法について検討することが望まれる。