Japan Association for Medical Informatics

[3-G-1-06] 電子カルテデータを用いた漢方薬の含有生薬の重複・過量実態の分析

*Hiroko Furuhashi1, Ichiro Kimura2, Shoji Tokunaga3, Akie Hirata3, Naoki Nakashima3 (1. 九州大学大学院 医学研究院 衛生・公衆衛生学分野, 2. anect株式会社, 3. 九州大学病院 メディカル・インフォメーションセンター)

Kampo Medicine, Polypharmacy, Real World Data, Electronic Health Records

【背景】
薬剤の多剤併用のうち害をなすものはポリファーマシーと呼ばれ、医療の課題となっている。我々は近年使用が増えてきている漢方薬に着目し、これまでに漢方薬被処方者のおよそ1/5に漢方薬の多剤併用、およそ1/6に含有生薬の重複があったことを報告した。本研究では、最も多くの漢方薬に含まれている生薬のカンゾウに着目し、多剤併用の有無別に含有生薬の重複および過量の発生実態を調査した。
【方法】
対象は2008年1月1日~2018年12月31日の間に九州大学病院を受診して、カンゾウを含有する医療用漢方製剤を処方されたことがあるすべての患者とした。該当患者の漢方薬処方のうち、処方期間を算出可能な用法が指定されているすべてのオーダーについて、日単位で多剤併用の有無、カンゾウの重複および過量の有無を集計した。過量は1日のカンゾウの総量が2.5g以上の場合と定義した。
【結果・考察】
カンゾウ被処方者16,511名のうち、4,554名(27.6%)に漢方薬の多剤併用、2,542名(15.4%)にカンゾウの重複、5,878名(35.6%)にカンゾウの過量があった。カンゾウの過量があった者のみに着目すると、多剤併用もカンゾウの重複もなかった者が最多(2,835名)であったが、それに多剤併用とカンゾウの重複の両方があった者が続いた(2,469名)。カンゾウの過量は多剤併用による含有生薬の重複だけでなく、単剤ですでに過量となっている漢方薬の処方の場合も多いことが明らかになった。
また、多剤併用者では単剤処方者に比べてカンゾウの過量の発生割合が2.74倍であった。さらに、漢方薬の最大併用薬剤数、総処方回数、総処方日数、最大処方日数のいずれの値も多剤併用者のほうが大きかった。多剤併用者ではより高頻度、長期間の漢方薬処方が行われており、構成生薬の過量が起こりやすいと考えられた。