一般社団法人 日本医療情報学会

[3-G-2-05] 医療DXにおける薬剤師の役割

*土屋 文人1 (1. 医薬品安全使用調査研究機構 設立準備室)

Medical DXs, Pharmacist, task-shifting

医療情報システムは当初レセプト作成が主体であったが、オーダリングシステム、そして電子カルテシステムへと変容しているものの、レセプト作成機能が中心に存在した設計は変化していないことの副作用が顕在化している。チーム医療を支える医療情報システムは本来、医療行為・データの記録が中心であり、レセプトは出力形式の一つに過ぎないのにもかかわらず、相変わらずレセプト中心のシステムであることは大きな問題といえる。人間工学ではシステム設計を「人間中心設計」とすることが早くから提唱され、世の中の多くのシステムはこの基本を守る形で進展している。しかし、医療の世界では「コンピュータ中心設計」が未だに継続しており、その中で安全対策が検討され続けてきた現状がこのままで良いのかを原点に戻って検討すべきである。
 一方、薬学部は6年制となり、度重なる薬剤師法・薬機法の改正も相俟って、薬剤師の業務はこの20年で大きく変容し、対物業務中心から対人業務中心への早期移行が強く求められている。調剤機器も以前は散剤の分包機程度しかなかったものが、今や薬剤調製に関する殆どの領域にロボットが開発・導入されている。電子処方箋の実用化は薬剤師の専権業務である調剤の基本となる情報が電子化されることであり、過去行ってきた薬剤師業務を原点に戻って再点検を行う必要がある。またAIの発展は作業ロボットへの業務移行に留まらず、処方監査等の薬剤の適正使用に関する各種知識を駆使した薬剤師の判断にまで及ぶことは想像に難くない。薬剤師がこの10年間で確立させなければならないことはチーム医療の一員として医療関係者に対して、かつ医療人として患者に信頼される薬剤師となるために何をタスクシフトさせ、何を薬剤師が行うのかつまり薬剤師でなくてはできない業務を時代の流れをみながら定めることである。本シンポジウムでは具体例を示して意見交換を行いたい。