一般社団法人 日本医療情報学会

[3-G-3-05] 聴診学習におけるセンサーデータを基にしたフィードバックシステムの提案と評価

*髙田 知裕1、松本 太陽1、八木 邦公2、敷田 幹文1 (1. 高知工科大学, 2. 金沢医科大学)

Stethoscope, Auscultation, Practical training, Pressure sensor, Feedback

心音聴診の指導では心音を聞き分けるスキルの修得を目指すが,正しく聴診器を扱えることはその前提である.しかしながら,聴診器の扱い方を含めた心音聴診の指導には指導医の臨床経験や力量を要する部分が大きく,客観的な視点からの指導は困難であった.また,臨床実習に共通する問題として,指導医の負担の増加や学生の学習機会の確保が困難であることなどが挙げられてきた.以上を踏まえ,指導医の力量や存在に依存しない学習システムの確立が望ましいものと考えられた.そこで本稿では,客観的な指導の実現,指導医の負担軽減,学生の学習機会の増加を目的とし,定量化された指標に基づくフィードバックシステムを提案する.定量化された指標を得るために,聴診器のダイアフラム面に感圧センサーを配置し,聴診時の圧力値を測定する.収集されたセンサーデータから算出可能な指標に関して,心音を正しく聴くことができていた場合のデータと正しく聴くことができていなかった場合のデータを比較し,統計検定により学習に有効であると考えられる指標とその傾向を調査する.測定対象者は医学部の学生20名である.次に,ベテランの指導医の学生へのコメントをデータと照らし合わせ,算出された指標から適切なフィードバックを導き出せるシステムを構築する.完成したシステムの評価として,学生の聴診に対するベテランの指導医のコメントとフィードバックシステムのコメントを比較し,どの程度有用性が認められたか検証を行う.結果として,本稿で提案したフィードバックシステムに学習における一定の有効性が認められた.このことから,フィードバックされたコメントを指導医に提示することで,その指導医の力量や経験に関わらず,客観的なデータに基づいた指導・評価が実現できると考えられた.また,学生がコメントを参照することで自習を可能にし,指導機会の増加と指導医の負担軽減につながるものと期待された.