Japan Association for Medical Informatics

[3-H-3-01] イノベーションのための歯科・口腔情報の標準化

*Yusuke Ida1 (1. The University of Tokyo)

Dental Informatics, Data Science, Practice Management, Standardization

医療等分野において、地域または全国的なネットワークおよびサービスの構築について、これまでおよそ30年にわたって検討がなされてきた。2000年代からは、各地で地域医療ネットワークが設立され、医療機関間の情報連携や、臨床検査の外注検査結果の連携などが行われる様になった。しかし、その中において歯科・口腔領域の情報が共有されるケースは残念ながら限定的なものにとどまった。その背景としては、歯科診療所における診療情報の電子化が進んでいなかったことや、電子的な医科歯科情報連携が盛んではなかったこと、システム導入の費用が高かったことなど複合的な課題があったものと推察される。
 政府が定める経済財政運営と改革の基本方針2022において、医療・介護分野でのイノベーションを強力に進める方針が示され、特に歯科・口腔領域は、全身の健康との関わりにおいて重視されており、エビデンスの蓄積や口腔健康管理の充実、多職種連携などICTを活用した歯科保健医療提供を強化することが明記された。歯科・口腔の情報は医療・介護の診療の場面のみならず、持続可能な保険医療制度の検討、個人・集団の健康増進や、身元確認など多様な利活用が期待される分野である。従って、従来の医療連携の手法に囚われることなく、口腔・歯科領域の医療情報プラットフォームのあり方を検討する必要がある。
 スマートフォンなどの個人用情報通信デバイスが地域、世代を問わずに普及したこと、SaaS /PaaSなどのクラウドシステムが一般化したことなど、技術的な素地が形成されたことに加え、コンテンツとなる歯科情報の標準化が着実に進行していることは、プラットフォーム形成の後押しとなり得る。本席では、我が国における歯科情報の標準化の現状を概観した上で、RESTful APIなどのWeb標準を用いて、これを利用できる環境を構築することの重要性について議論を行いたい。